新潟カルメン初日

昨晩の最終仕込みで大ピンチに陥った新潟カルメン。苦しみ抜いて準備を進めてきたのに、音響設備の問題でよい音を届けらないことになったら、とても悔しくてやりきれません。不安を胸に、でもきっとなんとかなるという希望を持って朝8時にはホールに入りました。

素晴らしい晴天に元気をもらいながらホールに着くと、すでに音響さんが作業に入っており、昨晩のリクエストに応じたセッティングに変更してくれている最中でした。

昨晩はモニターとして舞台に向けてセットしていたスピーカーもフロントに向けるよう改めたり、左右に分けて設置していたものを楽器のある下手側に集約させたりと、少しでも音楽が一体となるよう工夫しました。

それにより、少しは音がまとまって来ましたし、エレクトーンによる演奏効果が感じられるようになったものの、スピーカーの出力不足はエンジニアの腕と工夫ではどうにもなりません。

手配を進めているスピーカーも午前中の公演には間に合わず、現在ある環境の中でのベストを模索しますが、弱いスピーカーを精一杯鳴らすものですから、かなり無理した音に聞こえます。

客席で3幕への前奏曲を聞いていたリーダー格の歌い手には、「そこってフルートじゃないの?オーボエに聞こえるけど」と言われてしまうような音質です。緻密に練り上げて来たレジストレーションも、これでは台無し。

それでも、出来る限りの熱意で第1回目の演奏にのぞみました。とにかく弾きにくくて、集中力がそれこそ音を立てて崩れて行くような感覚。音色がきちんと再現されないので、自分が弾いているという感じがしません。

私たち演奏者は舞台花道で、指揮者は客席最前列中央。この位置関係では、指揮者から伝わるはずの音楽が届きません。さらに困ったことに、指揮者の肝心なところが、譜面台の縁に邪魔されて見えないのです。加えて、譜面灯が暗く、楽譜も見えません。

まるで地獄を泳ぐような80分でしたが、それでも大事故はなく終えることができました。この環境で演奏できたのは、ある意味驚きです。心底消耗しきりました

1回目が終わったところで、手配していたスピーカーシステムが届きました。休息を取っている場合ではなくなり、すぐさまセッティングに立ちあいます。

調整ができたところで、ただちに演奏してみました。そうそう、神田将の演奏はこういう音!いかにスピーカーが大切かが、この事態に接していた全員が実感した瞬間でした。

音の広がり、厚み、ふくらみ、ゆとり、などなどまったく違います。さきほどよりも音量をアップしたのに、むしろ耳にはやさしいくらいです。この環境で響きを確認しておきたくて、昼食を抜きにしてギリギリまで弾き続けました。いい音なので調子も上々です。

にもかかわらず、2回目の演奏も私としては悔いの残るものでした。エレクトーンの音はよくなっても、指揮者からの音楽が届かないのは同じ。さらに、譜面灯を明るいものに変えてもらったら、プログラムチェンジの状況を確認する画面にバッチリ反射してしまい、演奏に必要な情報を見られないまま、手探りで弾いていくような感じでした。

今回のことで、エレクトーン演奏には周到な準備が必要であることを痛感しました。音響面での妥協は致命的ですし、集中力を持続させるために、環境面でもあらゆる工夫をするべきです。今日の教訓を明日に活かし、わずかでも進歩した演奏を目指します。