秋が深まってくると、鹿児島の季節。新潟から戻って一息ついたところで、サクソフォンの波多江さん、ピアノの米津さんとともに廻る、子どもたちのための巡回コンサートに向けた準備に取り掛かりました。
このキッズコンサートは、神田将電子オルガントリオとタイトルが付いており、エレクトーンの多彩な可能性を軸にしながら、アンサンブルを組み入れていくというコンセプトでスタートしました。
ところが、演奏を重ねるうちに、私の中で「何か違うな」という感覚になって来たのです。エレクトーンを主軸にして、私がメンバーを引っ張っていくのは光栄なことですし、やりがいも感じますが、責任感ばかりが先に立ち、いつしか楽しみが薄くなっていることに気付きました。
これでは子どもたちにも楽しさが伝えきれません。共演メンバーものびのびと演奏できないことでしょう。これも私の責任です。
さて、どうしたものか。昨年来あれこれ考えながらも、「目の前のことに集中すべき」という私の方針により、なかなか本腰を入れて取り組めずに今日になってしまいました。
そんな折、絶妙なタイミングで米津さんから「何やりますか?」とメールが入りました。鹿児島リニューアルのことは、せんくらの時に伝えてあり、波多江さんにもメール済み。ふたりとも具体的な知らせを待っているのです。
子どもたちに伝えたいのは、エレクトーンの性能でも、我々のテクニックでもなく、音楽の真価です。時にはじけるように楽しく、時には胸が苦しくなるほど切なく、あらゆる感情と響き合う音楽の真の姿を届けたいと思っています。
与えられた時間を楽しく盛り上げるだけなら、何の苦労もありません。子どもの好きな曲だけ並べれば、その場はじゅうぶんな手応えを感じることでしょう。でも、それは音楽のごく一部でしかなく、私たちの真の姿とも違います。
コンサートの価値を高めるには、3人が本領を発揮する必要がありますが、これぞ自分にとって一番という曲はそれぞれに違いますので、これまでより得意とするソロやリードの曲を増やし、3者の底力をアピールすることにしました。
また、私の得意とするところは何かを考え直した時、ソロの時は別として、アンサンブルの際に共演者を引き立てることこそが、私の得意技です。たとえ私が一歩引いたとしても、私が引き立て役に回る方が演奏会はうまく進みます。
そんなわけで、共演者をいかに引き立てるかというコンセプトで、選曲を練り直しているところです。曲を決めれば、大急ぎで編曲を済ませなければなりませんが、数々の修羅場を越えて来ましたので、その点はなんとかなるでしょう。
準備がうまくいけば、今年はこれまで以上に生き生きとプレイする波多江さんと米津さんを見られるはずです。そうなれば、私もハッピー。3人がひとつになって、聞いている子どもたちや先生方も一緒になって、忘れ難いコンサートになればと願いつつ、頭をフル回転させています。