沖永良部島デュオコンサート

鹿児島から沖永良部島へ向かう飛行機は、わずか36人乗りの小さなプロペラ機。途中、島々の陰を眼下に眺めながら、南の楽園を目指します。

降り立った沖永良部島は曇り空。でも気温は20度と、上着のいらない心地よさです。着くなり早速ランチタイム。モダンな装いながら素朴な島料理を出す店で海鮮丼を味わいながら、ああ、南の島で魚を食べているんだなと実感しました。腹ごしらえも済んだところで、演奏会会場へ。昨年と同じく、中学校の中にある「あかね文化ホール」です。ホールでは、すでにセッティングが完了しており、あとは演奏を待つばかりという段取りの素晴らしさ。波多江さんがホテルに寄る用事があるというので、私たちより先に別組のリハーサルを先にやってもらうことになりました。

別組というのは、私たちのコンサートの後に、いつも歓迎の演奏を披露してくれている沖永良部島の演奏家たち。バランスやサウンドチェックを兼ねて、おふたりの演奏を私が客席で聞くことに。あ、それじゃ後の本番での歓迎演奏という趣旨が揺らぐかなと思いましたが、それよりよい演奏のためにサポートする方が大切です。

おふたりの演奏を客席で聞くと、昨年よりもかなりステップアップしています。それに加え驚いたのは音質。音響を担当してくれているシステムラボさんとは毎回のお付き合いなのですが、今回は私たちのコンサートのために、最新の音響機材を導入してくれたのです。

波多江さんが戻って来て、一通りのリハーサルを。実はこのホール、残響がまったくなく、音楽会にはあまり向きません。そのため、昨年も響きの面で大変苦労しました。でも、今年は音響設備が素晴らしいので、心地よい音を届けられそうです。もう反射板に頼る必要もないため、取り払うことに。ない方がステージもスッキリと見えます。

開場は午後6時半。ドアオープンとともに、子どもたちの元気な声が聞こえて来ました。今日も町内ではさまざまなイベントが重なっており、どのくらいお客様が足を運んで下さるかを関係者一同で心配していたのですが、なんと満席に。私たちは4年もこの島で演奏会をしているのですが、こうして飽きられるどころか、さらに膨らんでいくというところが嬉しいです。

演奏会プログラムは大曲揃い。前年と重なる曲はひとつもなく、沖永良部島で初めて紹介する曲がほとんどです。体力と集中力が必要な曲ばかりですので、汗だくになって全力を注ぐしかありませんが、その点でも満席のお客様とよい音響に大きく助けられました。

プログラムの最後には、島の皆さんからリクエストをいただいた「えらぶ百合ぬ花」と「サイサイ節」を演奏。リハーサルの際、どうしても島の方から直接アドバイスを受けたくて民謡の名手にご指導願ったのですが、せっかくなのでステージでも共演しましょうと、急にアンサンブルが決まったのでした。

どちらの歌もステキですが、私は「サイサイ節」が大好きです。素朴な旋律とともに語られる歌詞は、胸にジーンと沁みます。いつかこの曲を主題にしてシンフォニーに仕立ててみたいと、心の中で構想を温めているところです。

演奏会も大成功に終わり、客席に残ったサクソフォーンサークルの皆さんに向けて波多江さんから一言アドバイスをしたり、先ほどご紹介した島の演奏家による歓迎演奏を聞いたりした後は、島の皆さんとの親睦会に出席しました。深い人情に触れ、今年もこの島を訪れることができて本当によかったとしみじみ思いました。

今日の福らしや
物にたてららん
何時む今日ぬ如に
あらち あらちたぼり
(サイサイ節より)