昨晩から降り続けている雨。時折強い風を伴い、ホテルの窓は小石が当たるような音を立てています。この程度の雨でも胸騒ぎがするくらいですから、9月28日の台風17号襲来時は、さぞや恐ろしかったことでしょう。風の音というより、金属が擦れるような音だったという島の人の話を思い出します。
今朝も早起きをしましたが、残念ながら散策を楽しむ天候ではありませんし、インターネットにも接続できなかったので、ゆっくりと朝ごはんを食べてから、ホテルロビーにある島の本などを読んで過ごしました。まだ沖永良部島に到着してから19時間しか経っていないのに、もうお別れが近づいています。少し早めに迎えをお願いして、わずかな時間だけでも島の風景をみせてもらうことにしました。
向かったのは島の南東にあるウジジ浜。晴れていれば息をのむ日の出が眺められる自慢の絶景スポットだそうです。浸食された岩々が、見る角度によってさまざまなシルエットを生み出して、私たちの想像力を刺激します。
日が当たっていれば格段に美しいのでしょうけれど、この雨の中でさえ澄みきった海に心惹かれずにはいられません。遠くに目をやれば、ひとつとして同じ色のないグラデーションを帯びた海が広がっています。
浜の岩には知らない植物が茂り、その下を小さな貝たちがのんびりと動き回っていました。潮と風の厳しい世界でも、みんなたくましく生きています。
ほんの数分でしたが、沖永良部島の風景を心に刻むことができました。いよいよ空港へ。出発の15分前に行けばじゅうぶんですが、少し早めに向かいましょう。
空港では昨晩のコンサート関係者が見送りに来てくれていました。4回目にして、やっと島の皆さんと真にひとつになれたと実感できたこともあって、今回の旅は特別です。皆さんと固い握手を交わし、また必ずと約束をしてゲートへ進みました。
昨日よりは大きいとはいっても、旧塗装のプロペラ機での旅。機内は飛行機とバスの中間のような、のんびりとした雰囲気です。離陸すると、島の風景はすぐに厚い雲の向こうに霞んでいきました。またいつかきっと。そして次こそは、ゆっくりと島時間を満喫したいものです。
飛行機を降り、共演の波多江さんやエージェントともお別れ。私は、あまりしみじみとした別れ方は好きではありません。あくまでもさりげなく、まるであくる日も会うことになっているような感じで。そうすれば、きっとまたすぐ会えると思うから。