まだ暗いうちに朝食を。ベトナムの朝はもちろんフォー。それがホテルであっても。迎えの車に乗り込むと、覚えのある香りに深い安らぎを感じ、まるで天国にいるような気分に。それは月桃の香り。4時間のドライブを経て、世界遺産ハロン湾へ。
クルーズ船に乗り込み、三千の奇岩や島の浮かぶ海に出発。願ってもない晴天と、ジャケットを着ているとわずかに汗ばむくらいの暖かさに恵まれ、絶好のクルーズ日和に。風もほとんどなし。海面は穏やかさそのもの。
クルーズ船は数知れず。船内で宿泊できるもの。海鮮料理を味わえるもの。完全なプライベートチャーターが可能なものなどなど。共通しているのは、どことなくレトロで海賊の航海時代をちょっぴり彷彿とさせること。
競うようにして海に出た後は、船の揺れに身を任せ、ただぼんやりと風景を見て過ごす。最初に感じた風の心地よさといったら。エンジンの音もほとんど聞こえず。喧騒のハノイと比べたら、ここにあるのはパーフェクトな静寂。
船首に立って感じる風は一定。昔は海賊の隠れ場だったというこの海。龍が下る場所という言い伝えも、真実のように思えてくる。漁師が小舟で売りに来た蝦蛄や蛤を焼き舌鼓。このまま数日を過ごしたいほどの気ままな時間。
立ち寄った洞窟はいささか人工的な装飾。唯一美しく見えたのは、天上から差し込む一筋の光。今日も輝く太陽に感謝。