第3回サマーコンサート(香川)

香川でのサマーコンサートを終えたと同時に、今年の夏が終わったような気持ちになっています。米津さんと初めてのふたり旅、現地の皆さんの熱烈な歓迎、遠方からも駆け付けてくれたオーディエンス。どれもが最高の思い出になりました。

香川に向かったのは24日の早朝。着くなりすぐに打ち合わせに入り、その流れでリハーサルを開始しました。今回のサマーコンサートは、第1部が香川出身の若い娘たちのステージで、第2部が米津×神田のロシア作品ステージ。私は、自分の演奏ももちろんですが、第1部の仕上がりも気になって仕方がありません。

とにかく、このコンサートでの私の役割は、ひとり二役どころか、あまりに幅広過ぎて、よく頭を整理しなければ、自分が何をしているのか分からなくなりそうなほどです。

演奏家としての立場はほんの一部分でしかなく、娘たちの音楽を監督したり、米津さんのマネジャー役をしたり、ステージマネジャーをしたり、プログラムをこしらえたりと、まったく余裕がありません。

でも、こうした慌しさの中でいかにして冷静さを保ち、イライラすることなく楽しみながら力を合わせて準備を進めていくかにチャレンジできるのも、貴重な体験。たったひとつの心配は、体力がもつかどうかです。

前日のリハーサルは順調に進みました。娘たちも優秀で、かなりいい線まで自力で仕上げてあったので、ちょっとしたヒントを注ぐだけで、みるみる完成度が上がります。

夕方には、別会場でひとり稽古に励んでいた米津さんと合流して、通しリハーサルを。こうしてコンサートの全貌が見えてくると、出演者もスタッフも翌日のコンサートがますます楽しみになりました。

当日は、朝からセッティング。演奏している時以外の私は、舞台スタッフそのもの。床を這って配線をしたり、楽器の微妙な位置を調節したり。これで、自分が弾かずに済むなら心底楽しいと思えるのですが、演奏用のエネルギーを確保しておかなければなりませんので、だんだん不安になってきます。

午前中に若手たちのリハーサルを済ませ、午後からは第2部を通します。まずは米津さんが、ピアノソロを。木の温もりが感じられるホールに響くピアノソナタ。あまりの美しさに、泣けてきました。

そのまま気が遠くなるまで余韻に浸りたいところですが、続いて私の出番です。ソロを弾き始めるものの、まだソナタの震えからスイッチが切り替わりません。これは本番までに対策を考えなければ。そしてコンチェルト。手応えはじゅうぶんです。

ギリギリまで準備に追われ、あっという間に開場時間。30分の間に、スタッフから演奏家に変身する私。第1部では、私が司会。と同時に音響コンソールを操作しなければなりません。何かひとつでも動作を忘れたら、コンサートは台無しです。

そこは持ち前の集中力で何とか乗り切りました。娘たちの演奏も、生き生きとしていて素晴らしい出来栄え。まったく心配がいらないことにも助けられました。

第1部がフレッシュな雰囲気で終わり、10分の休憩を挟んで第2部。急いで着替えてステージへ。まずは私が全演奏曲の解説と聞きどころのヒントを。その後は、ずっと音楽だけで綴っていきます。

心地よい緊張感の中、素晴らしい作品を演奏しているという喜びに浸る。演奏家として最高の気分です。米津さんとのコンチェルトも、どんどんよくなってきました。

演奏会は大成功に終わり、若手たちも一段と自信を高めたことでしょう。私も鼻高々。でも、体力は使い果たしました。羽田空港に着き、米津さんと別れたとたんにしばらく座り込んだまま動けませんでした。

それでも幸せいっぱいなのは、全力で音楽に尽くせたから。さあ、直ちにエネルギーを補てんして、次なるステージが待つ姫路に向かおうではありませんか。