今年も仙台クラシックフェスティバルに招いていただき、3公演で演奏いたしました。例年ですとアンサンブルの他にソロ公演もあったのですが、今年はすべてアンサンブル。それも今をときめくスターたちのお相手なので、緊張も喜びも最高潮!かつてない濃密なせんくらでした。
まずは姜建華さん、浅野祥さんとのトリオ公演。おふたりそれぞれとは何度もご一緒して、今では絶妙に息の合う演奏をする自信がありますが、おふたりと同時に共演するのは初めてで、姜さんと浅野さんは初顔合わせです。
本来なら事前に東京でリハーサルをしたかったのですが、超売れっ子で世界中飛び回っているおふたりに、同時の空き日は1日しかありませんでした。ところがその日に限ってエレクトーンの使えるスタジオが全滅。終わった・・・と困り果てましたが、気を取り直して、このふたりなら前日でも何とかなる!と信じて、仙台での初顔合わせをセッティングしました。
10月4日、浅野さんは朝から番組収録、夕方には本番というハードスケジュールの中、午後の3時間を空けてくれることに。姜さんと私は予定より1日早く仙台入りしてスタジオに集合しました。
今回の演奏曲目と編曲は私に任されたので、それぞれの個性、楽器の特色が光り、なおかつ両方の楽器との相性がよく、おふたりに大きな負担とならないように仕上げる必要がありましたが、最小の負担にして最大の効果を実現できたのは、やはりおふたりを熟知していたからだと自負しています。
とはいえ、楽譜が仕上がったのは直前でしたし、譜面化するよりも口頭でニュアンスを伝えることに重きを置くべき作品もあり、顔を合わせるまではどうなるのかわからないというのが正直なところ。
にもかかわらず、不安は一瞬で払拭されたのです。浅野さんの勘の良さ、柔軟性は本当に素晴らしい。そして姜さんの包容力も他に類を見ないレベルです。私がことさら仲人役にしゃしゃり出ずとも、音が鳴れば自ずとひとつにまとまる様子は、神秘的なほど美しい情景でした。
リハーサルは無事に終わり、あとは本番を待つばかり。と言いたいところですが、私はリハーサルで定まったことを忘れないうちに譜面化する作業があり、結局、それは翌日の午前中いっぱいまでを要しました。
そして、午後には廣津留すみれさんとのリハーサルがあり、長町のヤマハまで向かい、自己練習とリハーサルを終えてから、日立システムズホールへ。予定よりスムーズに移動できたので、少し余裕がありましたが、何だか追い詰められた感覚が消えず落ち着きません。
そうこうしているうちに姜さんたちとの本番がスタート。比較的自由な部分の多い内容だったこともあり、本番はとても楽しく弾くことができました。姜さんも浅野さんも一緒にやっていて本当に気持ちがいいし、心が通じている実感があります。
その幸せな時間もたった45分であっという間におしまい。お名残惜しくふたりとさよならして、私は夜通し稽古へ。翌日は廣津留すみれさんとの初共演と、青柳晋さんとのラフマニノフ。生涯トップクラスのタフデイになるでしょうけれど、24時間後にはすべて終わっています。あと少し。頑張れ!
⇩写真:上田海斗(フォトグラファー)