佐藤華純リサイタル大成功

私の時計は9月から止まったままですが、世間の時は流れ続け、いつのまにか秋がやってまいりました。9月20日に東京文化会館でドラマチック・ボイスをやった頃までは、まだコントロールが利いていたものの、その後は濁流に飲まれて、いまだ落ち着いて呼吸ができません。

そんな中、9月28日は宇部で心温まる演奏会が開催されました。佐藤華純さんのリサイタルです。今井俊輔さんとともに華純さんを支え、とてもよいステージをお客様にお届けすることができ、心満たされるひとときとなりました。

前日に宇部に向かい、時間をかけておこなったリハーサル。その会場はかつて銀行だった、村野藤吾による建築で、とても雰囲気があります。夕刻になると高い窓に西陽が差し、その光の美しさにうっとりしながら弾きました。

そして迎えた当日。宇部音鑑の皆さんがうちわやイラスト入りポスターで歓迎してくれ、最初からアットホームな気分に。リハーサルをざっと通して、本番に備えます。

当初はシンプルな照明にとどめる予定でしたが、せっかくのムードをもっと盛り上げようということになり、今井俊輔さんのマネジャーがおおいに協力してくれ、曲ごとのテイストに合わせた照明も完成。チームワークもバッチリです。

華純さんはちょっと緊張気味でしたが、お客様に喜んでいただくためにできる限りをするという意欲に溢れていました。第1部前半はプッチーニの世界ということで、アリアを4つ連続で披露。それぞれのヒロインになりきり、キャラクターを変えて歌い分ける様子に、会場も盛り上がります。

さらに盛り上がったのは、今井俊輔さんが登場してデュエットした時。客席を回るサプライズもありました。第1部後半は世界の名曲を日本語で。耳馴染みのいい曲が揃い、クラシックにあまり親しみのない方でも楽しめる内容でした。

第2部の前半は今井俊輔さんによるオペラアリア。椿姫、アンドレア・シェニエ、カルメンと、名作のアリアを披露し、その圧倒的な表現で客席を魅了しました。本当にすごい!

続いてはオペラ座の怪人。セットもないシンプルなステージながら、まるでミュージカルシーンが飛び出してきたような臨場感。声やサウンドだけでなく、ふたりの表情にも注目が集まりました。

締めくくりはそれぞれのソロとデュエットで。ふたりとも「らしさ」の光る選曲で、お客様に人柄も届いたのではないでしょうか。

割れんばかりの拍手は鳴り止まず、アンコールは2曲。初リサイタルにして、品格漂う立派なリサイタルを成功させた佐藤華純さん。主催の宇部音鑑のサポートも手厚く、皆の連携が光る公演となりました。

今井さんのファンや私の知り合いも駆けつけてくれていましたが、私が体調不良で皆さんとの面会がかなわず、たいへん失礼しました。なんとか最終便で帰京して体を休めることができ、翌日にはせんくらに向けての稽古に復帰しました。

佐藤華純さん、人生を掛けたリサイタルの成功、おめでとうございます。

⇩写真:上田海斗(フォトグラファー)