ミッション・インポッシブル

どん底から満席へ。今回の札幌公演は、不可能を可能にした主催者たちの粘りが、私自身の力量をも超越させる魔法となり、雪解けの街に春の嵐を巻き起こしました。

神田将のエレクトーンコンサートを開催しよう。主催の札幌音鑑は、私の公演が好評であることを聞きつけ、皆で相談の上、実施を決定。勇んで準備を進めるものの、まったくチケットが動かず非常に苦労したのだそうです。

エレクトーンのイメージ、神田将の知名度不足など、さまざまな要因が考えられますが、どんな雰囲気のコンサートなのか、行って何を聞くことができ、どんな気分で帰れるのか、まったく想像できないのが大きな問題ではないかと思います。

しかし、札幌音鑑は諦めることをせず、市内の音楽教室を一軒一軒回り、チラシを置いてもらったり、説明を聞いてもらう努力を重ね、コツコツとお客様を誘ってくれ、ついにはチケットを完売したのです。

そうして迎えた公演当日。初めてエレクトーン演奏を聞く方もいれば、エレクトーンを熟知しているベテランの先生もいて、子どもから両親と同じくらいの歳に見受けられる方々まで、幅の広いお客様が集まりました。

演奏が始まると、そうした立場や歳の差が一切関係なくなり、会場がひとつになって音楽を味わっている雰囲気に。本番というのは大なり小なりストレスがあるものですが、この日はそれがなく、お客様を前にして演奏しているというより、自室のリビングで親しい人に囲まれて弾いているようなリラックス感があって、久しぶりにコンサートを楽しいと思うことができました。

今回、第1部はエレクトーン独奏、第2部は松本昌子さんをゲストに迎えました。とりわけ第2部の華やかで楽しいステージは、お客様の記憶に深く刻まれたことでしょう。

松本昌子さんは、私が最も信頼するミュージカルシンガーのひとりです。いつも明るく朗らかでいて、実はとても研究熱心。東京での稽古では、細部を練るために何度も何度も何度も同じ曲を歌ってもらうのですが、面倒がるどころか、楽しくて舞い上がるとまで言ってくれます。

その成果もあって、私たちの息は怖いくらいピッタリ。お客様も昌子さんのチャーミングな笑顔と、ド迫力の歌唱とのギャップを、おおいに楽しんでいました。

そして、今回の成功に大きな貢献をしてくれた姫路労音の太田垣清治さんを忘れてはいけません。姫路からエレクトーンとスピーカーを積んでフェリーで往復したばかりか、札幌との打ち合わせや準備など、プロデューサー兼マネジメントで支えてくれました。

先月は熊本県の人吉でしたから、まさに列島縦断。エレクトーンは、機種が同じならどこのものでも問題ありませんが、やはり使い慣れた個体は安心感が違います。

また、ステージ写真は、この春に大学を卒業したばかりのルーキー、上田海斗さんが初仕事として撮影してくれました。被写体のことをよく理解してくれているので、いい表情で撮れていると思います。この先も神田チームの一員として各地に伺う機会がありそうですので、どうぞよろしくお願いします。

最後に、札幌在住の我が一番弟子・種村敬子も、この公演に惜しみない貢献をしてくれたことをご報告いたします。口下手な種ちゃんが運営会議でエレクトーンの魅力について講演したと聞いた時には、目の玉が飛び出るほど驚きました。さぞや必死だったことでしょう。数少ない友人知人を一人残らず誘ってくれたことにも感謝です。そんな種ちゃんが、札幌で優秀なミュージシャンたちと出会い、よい音楽仲間として活動していることもわかり、老師はとても安心しました。

10年来、どうしても会いたかった思い出の人にも再会でき、実り多かった今回の札幌。また必ず帰ってきます。

さて、次の演奏会は4月21日、広島県の坂町で開催される復興音楽祭です。広島のミュージシャンたちとの共演に加えて、ピアニスト米津真浩さんを招いてのラフマニノフ作曲ピアノ協奏曲第2番(抜粋)の演奏で出演します。菊池玲那と地元子どもたちとのアンサンブルにもご期待ください。

続いて24日は三重県津の文化会館大ホールでソロコンサート。ランチタイムにワンコイン(500円)でお楽しみいただけます。

そして5月3日は東京文化会館での30周年リサイタルです。こちらは苦戦中。ぜひチケットをお求めいただき、応援よろしくお願いいたします。