もうひと月ほど前のことですが、中秋の名月を見逃したので、せめて皿の上でと思い、中国料理「王朝」を訪ねました。昨年も同様のコースがあって、卓上で名月観賞をしているような楽しさでしたので、今回もきっと満足させてくれることでしょう。
ヒルトン東京のレストランは、私にとって、落ち着いた雰囲気が魅力でした。ところが、最近はカジュアルで活気あるムードが主流になり、静かに食事を楽しめるホテルレストランは少なくなっており、ヒルトン東京も例外ではありません。
ここヒルトン東京では、フレンチレストランが閉店してしまったので、洗練されたフルサービスを提供する店は、日本料理「武蔵野」と中国料理「王朝」だけです。
この日、個室では賑やかな会食がいくつかあったようですが、ホール席はとても静かでした。しかも、きちんと身なりを整えた外国人が、落ち着いて食事を楽しんでいるテーブルばかりで、とても上品な雰囲気。私も思わず一杯飲みたくなり、珍しく紹興酒を注文しました。
料理はおめあての名月コース。昨年と重なる品もあるようですが、美味しいものは何度でも食べたいので構いません。早速前菜から。
中秋の冷菜盛合せ「中秋満園」
特上ふかひれの姿煮 観月と共に「月照天山」
海老と蝦夷鮑の炒め二種の味わい 名月仕立て「月満銀河」
穴子の宵月包み揚げ うさぎ点心と共に「明珠戯兎」
フレッシュトマトとライチの黒酢酢豚 満月飾り「金珠夜光」
海鮮すり身入りマッシュルームのウニソース「半月沈江」
かに肉と岩ノリのスープかけ炒飯「翠湖映月」
名月杏仁豆腐 蓮の実あん入り菓子添え「夜江斜月」
それぞれに秋や月のイメージが表現されており、味わいはもちろん、目でも楽しめる内容。昨年と重なっている料理も、皿や盛り付けに新しい工夫があり、よりモダンで印象深くなりました。
気の利いたサービスにも大満足。久しぶりにホテルレストランの王道を感じさせてくれるひとときに出会えました。