中井智彦トーク&ライブ

中井智彦さんが歌手仲間をゲストに招いて開催しているトーク&ライブ「uta friends」に出演しました。私は歌手ではないのに声を掛けてくれたこと、とても嬉しく思います。

会場は渋谷のJZ Brat。このライブハウスが入居しているセルリアンタワーには何度も訪れていますが、JZ  Bratは足を踏み入れるのも初めて。エレクトーンシティの移転以来、渋谷に来る機会がほとんどなく、変貌する景観にとても驚きましたが、セルリアンタワー東急ホテルのロビーは今も変わらず、落ち着きがあって心和む空間です。

ライブハウス店内は、電球が散りばめられたガラスの床から、立体的な構造のミュージックホールへと続き、私が知っている一昔前のニューヨークを思わせる雰囲気。座席が整然と並ぶコンサートホールと違い、ランダムにテーブルが置かれ、さまざまな機材が散在している様子もまた都会的です。

ステージはなく、店の一角がパフォーマンスエリアになっており、そこにいつもはないエレクトーンが加わり、熱演を待ち構えています。配信もあるということで、多数のカメラがこちらを狙っているのも面白く見えました。

今日はトーク&ライブ。演奏もしますが、トークもたっぷりと。さてどんな会になるのでしょうか。オープニングからしばらくは、中井さんとピアノの長濱司さんのパフォーマンス。私も客席後方から鑑賞しながら出番を待ちます。

軽快なリズムに乗った歌が始まると、お客様も手拍子をしたり体を揺らしたりと、くつろいで楽しんでいる様子。理屈抜きで音楽っていいなぁという雰囲気です。そのムードに包まれていたら、あっという間に自分の出番になりました。中井さんに呼び込まれて、まずは1曲ソロを。それから、出会いのことや自分の音楽のルーツなどをお話しして、中井さんの最新アルバムから「翼をください」を演奏し、第1部が幕。

後半は、長濱司さんアレンジの「ラ・ラ・ランド」メドレーでスタート。中井さんは歌のほかにショルダーキーボードを弾き、ピアノとエレクトーンと合わせてトリプルキーボードでのアンサンブルをエンジョイ。そして、会場の皆さまからのご質問にお答えするトークセクションを経て、歌の数々をお届けした第2部。本当にあっという間でした。

今回、ホスト役は中井さんでしたが、私は居心地よく実に気楽でした。豪勢な手料理を準備して客人を自宅に迎えるのが普段なら、今回は手ぶらでお邪魔してご馳走になったようなもの。そこで感じたのは中井さんがもてなし上手だということです。相手への敬意を忘れない心意気にも、中井さんらしさが溢れています。

こうして気持ちよく終演したライブですが、私としてはようやくここに辿り着けて安堵したのが実感です。特に9月以降は余裕がなく、どうなることかと不安でした。

切羽詰まった時、精神的に参ってしまったらどうにもならないので、精神の限界は超えないよう注意深くコントロールしていますが、若いときと違って体力の無理が効かない今、体調管理の方法を年齢相応にシフトする必要を痛感しています。

スケジュールは1年前には確定しているのですが、翌年に今と同じ体力があるとは言えないのが現状ですので、ご迷惑を掛けないためにも、今までよりもスケジュールにゆとりを持たせていかなければなりません。

今年はその見込みに不釣り合いがあり、本当にハラハラしました。10月上旬には、きっと私は豊洲にも渋谷にも立てないだろうと予測し、責任を取る手立ても考えました。ここまですべての公演を予定通り開催することができたのは、そうした状況を理解し、協力してくれた主催者や共演者のおかげです。

先月扱っていた曲に「今日も一日を生き延びた」という一節があり、まずは今日をやり抜いて、次のことはそれから考えるというきっかけになりました。冷静に渋谷の映像を見ると、私は顔で笑っていても芯は疲れ切っており、命を輝かせて熱唱している中井さんに対して申し訳なかったと思います。どうかお許しください。

◆公演中、中井さんと私の共演は今回が4回目と申しあげましたが、正しくは5回目です。訂正してお詫びいたします。