日ごろ演奏会で世話になっている方の母校でコンサートを開催するため、兵庫県北部にある新温泉町を訪ねました。その町がどんな様子なのか、湧き出る温泉がどれほど素晴らしいのかは、耳にタコができるくらい聞いていましたが、実際に行くのは初めてのこと。想像通りなのか、はたまたまったく違う世界なのか、胸躍らせながらのドライブです。
ここのところ憔悴し切っている私を元気づけようと、往路は鳥取経由を選び、深いブルーの日本海を見せてくれ、前回海岸に立った時を思い出せないくらい久しぶりの海に心洗われました。鳥取市街から新温泉町までは1時間ほど。兵庫県といえば神戸など南側のイメージがあり、日本海側の兵庫県はまた一味違う雰囲気です。
コンサートは午前中に開催するため、新温泉町には前日の午後に入りました。宿は新温泉町の中心、湯村にある老舗旅館。地名が新温泉や湯村だなんて、どれほど湯に沸いてるのか想像もつきませんでしたが、百聞は一見にしかず。そこには生活に溶け込んだ素朴な風景と温泉街らしい風情が同居しており、リラックスするにはもってこい。一瞬で来てよかったと感じました。
ゆったりくつろいで早めに休み、翌朝はしっかりと朝食をいただき、立派な庭園を眺めながらコーヒーも飲んで、いざ照来小学校へ。宿から照来へは車で10分ほどですが、湯村とはまた違うゆったり感のある場所で、地域全体が大きな牧場のようです。体育館は広く大型ですが、全校児童は50名ほど。この日はちょうどオープンスクールで、地域の方も自由に学校見学ができることもあり、子どもと大人が一緒になって音楽を聞く機会になりました。
学校でのコンサートはじゅうぶん経験があるので、何があっても平気だと思っていますが、照来の子どもたちはなかなか手強くもありました。何しろ自由で明るく、子どもらしいといえばそうなのですが、気取りや人見知り感がまったくなく、見慣れぬ私に旧知の友のように接する様子に、私の方が押され気味。
「みんなの町の自慢は何ですか?」と問い掛ければ「肉!」「牛肉!」「鶏肉!」「豚肉!」と肉のオンパレード大合唱。「じゃあ、不満はある?」と聞けば「な〜い!」。そりゃいいね!と応じるそばから「店がな〜い!」。
先生方もおおらかで、子どもがちょっとハメを外しても注意せずに見守っています。この「放し飼い」的雰囲気が人懐っこさのヒミツなのかもしれませんね。こうして初めて出会った子どもたちと親しく話し、たくさん笑って、音楽を聞いてもらって、忘れがたいひとときとなりました。
終演後は名物但馬牛のステーキランチをご馳走になり、98℃の源泉で茹でたボイルドエッグを河原で頬張り、新温泉町堪能フルコースを経験させてもらいましたので、気分はすっかり新温泉町観光大使。今度は両親を連れてカニの季節に再訪したいと思います。