二人の歌手がプッチーニの二重唱を連続9曲という、まず聞いたことがないような演奏会がありました。これがどれほどものすごいことなのか、企画が決まった時から想像はしていましたが、実際に演奏を体験した今は、あまりのことにまだ信じられないような気分です。
ソプラノとテノールの二重唱はどれも、見せ場ならではの大きなインパクトを持っており、感情の起伏が非常に激しく心身に大きな負荷がかかります。
お客様に心地よく楽しんでいただくために、演技の濃度や曲目の順序、緩急の調整など、細かいことまで一緒に考えながら工夫を重ねました。
想定としての準備はじゅうぶんにしたものの、実際に演じたらどうなるのか、誰にも経験がないのでわかりません。私は弾くだけの軽い立場でありながら、途中で燃え尽きずに最後まで行けることを目標にするほどリスクが高く、リハーサルを繰り返しても確かな手応えをまったく得られないまま本番となりました。
歌手が声をフルに使うのが唯一本番の時だけというのはよくあることですが、先が見通せない中、今回は特にセーブしていたように思います。ひとたび堰を切って溢れ出した音楽は、まるで命を得たかのように脈動し、圧倒的な表現に昇華していました。
歌手が歌って奏者が弾くというだけの関わりではなく、こうしようああしようと、アイデアを寄せ合って一緒に作り上げた演奏会。これはぜひ多くの方々に体験していただきたいので、また必ず再演の機会を設けます。