12月に演奏したのは、わずか2曲だけでした。どちらもオーセンティックな作品ながら、たいへんユニークな企画での演奏だったので、これまでにない特別な体験をすることができました。
ひとつはお馴染み米津真浩さんとのふたり協奏曲。名古屋で開催された米津さんのコンサートにゲストという形で招かれ、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を共演したのですが、30席ほどのコンパクトな空間で演奏するのは初めて。遠慮なく思い切ってアンサンブルしたので、お客様はさぞや騒々しくお感じになったことと思います。私たちは楽しく演奏できましたが、お付き合いいただいたお客様には申し訳ありませんでした。
そして本年を締めくくる舞台は大阪での蝶々夫人でした。ハイライトと言えども、2時間半の公演ですので、ほとんど全編に近いかたち。衣裳やセットもあって、本格的なオペラになりました。こちらもラフマニノフ同様、これまでになくコンパクトな会場だったので、エレクトーンを客席内に設置し、お客様と一体になり、お客様と同じ環境の中で演奏する経験をしました。
蝶々夫人の準備に費やしたのは60日。10月のリサイタル直後から、ほとんどすべての時間を注ぎ、毎日18時間の自己練習に加え、実施されたすべての稽古に参加して臨んだ本気の舞台です。それでも時間は足りず、終演までは生きた心地がしませんでした。
それでも終わってしまうと寂しいものです。あれほど毎日必死で弾いて来たものを、もう弾かなくていいということに、まるで何かに見放されたような心地にさせられます。
今年は念願のリサイタルも開催でき、大きな飛躍の一年となりました。来年も突き進んでまいります。