名古屋での演奏会

米津真浩ピアノリサイタルの衝撃と興奮が醒めないまま、公演制作者としての始末を進めるうちに夜が明けました。さあ、久しぶりの名古屋だ。気合いはじゅうぶん。旅支度を調え、演奏曲をひと通り弾いて、8年ぶりの名古屋に向けて出発です。

賑わう東京駅で清水理恵さんと落ち合い、そこにピアノリサイタル鑑賞のために上京していた菊池玲那も加わりました。朝食がまだだったのでこれまたずいぶんと久しぶりに駅弁を買い込みいざ乗車。東京から名古屋に行くのに、函館のカニイクラ弁当が食べられるとは便利な時代だと感心しつつ北の味覚に舌鼓。車内販売名物のコーヒーを飲んだらあっという間に名古屋でした。

名古屋駅は東京駅以上の賑わいで、人波に圧倒されながらも、やはり活気はいいものだなと実感。ここでタクシーに乗ってしまえば、旅の情緒は一切なしになってしまうので、地下鉄に乗ってみようということで清水さんと意見が一致し、見慣れない車内や駅の様子に異国を訪ねるようなときめきを味わいました。

この日の演奏会場は昭和文化小劇場。初めての会場ですが、客席数がコンパクトで手頃ながら、オケも乗りそうな広々としたステージがあり、とても使いやすく気に入りました。東京にもこんなホールがほしいです。

ステージの準備はあらかじめ済ませてくれてあり、程なくリハーサルを。何の調整も必要がない理想的なセッティングでした。清水さんもたいへんリラックスして、のびのびと歌っていたので、よい演奏会になる手ごたえをつかんでリハーサル終了。

開場後も客席は静かで、冷めた空気なのかなと心配になりましたが、いざステージに出ると盛大な拍手で迎えられ、期待のこもったまっすぐな視線を注いでくれているのが感じられました。

前半はエレクトーン独奏でクラシック名曲を6作品。ふだんはあまり触れないエレクトーンの弾き方などの話を交えて進めました。後半は清水理恵さんを迎え、ドラマチックなアリアやカンツォーネをたっぷりと。お客様も次第にリラックスしてくださり、心地よい緊迫感や明るい躍動感など、その時々の空気に合わせて楽しんでいらっしゃいました。

理恵さんとの久しぶりの共演は、本来なら7月31日のリサイタルで実現していたはずですが、パンデミックの影響で来年5月3日に延期となったことで、今回が一年ぶり。それでもお互いの呼吸にブレはなく、気持ちよく、そして大胆なアンサンブルをすることができました。

懐かしい顔ぶれにもお会いし、長年お伺いできなかったのに忘れずにいてくれたことに感激。また名古屋で演奏できる機会を心待ちにしています。

一度帰京し、来週は大阪と山口を往来しながら演奏会をお届けしてまいります。応援よろしくお願いいたします。