宇部での演奏会が終われば、余韻を味わいながら山口の皆さんと親しく笑顔を交わしたいところですが、翌日の演奏会に備えて大阪まで移動するため、すぐに出発しなければなりません。
4時間の道中、かつてなら、冷えたシャンパンとバカラのグラスを用意して、宇部の料亭に注文した鰻かステーキの重とともに新幹線で広げて祝杯なんてことも出来ましたが、今は移動中に1秒たりともマスクを外せませんので、ただひたすら体を休めて過ごすことになるでしょう。ホテルに着いたら、こんな時間に食べたら体に悪いよなと躊躇しつつも、デスクに向かって冷えた弁当を啄み、バスタブに湯が満ちるのを待つ、というのが最近のパターンです。
宇部でラフマニノフピアノ協奏曲第2番を弾き終え、次に鍵盤に触れられるのは翌日、大阪茨木の公演会場でですが、調律が終わるのを待たなければなりませんので、午前11時頃になる見込み。開場までは2時間半ありますが、がむしゃらに弾けば体力も集中力も消耗し、本番に差し支えます。ほどほどの調整で満足し、余裕を持って本番に臨めるかどうかは事前の備えに掛かっているとはいえ、難度の高い協奏曲をふたつ連続して演奏するという狂気のステージを前に余裕をふかせられるピアニストは、そうそういるものではありません。
このような境遇でよい演奏を実現するには、奏者本人の実力が必要なのはもちろんのこと、周囲のサポートが成否に大きな影響を及ぼします。奏者が演奏に集中できる環境を整え、余計なことを尋ねたり口にしたりせず、必要なことを先回りしてさりげなく提供するよう努めるのも私の役目。会場入りしてからのことだけでなく、旅程すべてにきちんとした計画が必要で、予想外のことが生じた際の代替案も二重三重に用意してあります。
今回の旅程は、米津さんにも私にも負担の大きなものになっていますが、ご来場くださるお客様に、来てよかったと感じていただける演奏をお届けするため、事前準備をしっかりとして、波に乗った状態でお伺いしたいと思います。10月米津真浩連続3公演の千秋楽、茨木。どんなコンディションで登場するのか、ぜひ実際のステージでご覧いただければ幸いです。ご来場をお待ちしております。
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