薔薇と月に願いを込めて

4月15日は宗田舞子ソプラノリサイタルに出演しました。外出に際し次第に緊張感が高まりつつある中、期待を寄せてくださる多くのお客様がご来場になり、ゆとりある空間の使い方ながらも、演奏会らしい活気に包まれました。

宗田舞子さんは、一年がかりでコツコツと準備を重ね、工夫を凝らしたステージ作りでお客様を魅了。テーマに沿った選曲やコスチュームにも、存分にお楽しみいただきたいという思いやりが込められ、温もりのある雰囲気が伝わったことと思います。

私にとっては、半年ぶりの東京文化会館であり、半年ぶりの東京公演でもありましたので、やっと家族に演奏を聞いてもらえて嬉しかったです。エレクトーンの偉い先生方も顔を揃えてくださいました。

宗田さんの選曲は、テーマという軸に沿いつつも多岐に渡っており、エレクトーンで演奏するに当たっては準備に時間と工夫を要しました。元来管弦楽用に書かれた作品は、総譜さえあれば作曲家の意図を取り違えることなく組み立てられるので、複雑な作品であってもすべきことは明確です。

一方で、歌曲などのピアノ伴奏を基本とする作品は、シンプルであればあるほど再構築に神経を使います。一歩間違えば持ち味を台無しにしかねませんので、ある程度仕上がったのに納得がいかず作り直すこともしばしば。3分ほどの小品にオペラ全幕分の労力を注ぐこともあり、今回も試行錯誤が続きました。

また、宗田さんのコスチュームに合わせ、クローゼットで眠っていたお城の召使い風上着を引っ張り出して着たことも楽しい思い出です。いい歳していささか気恥ずかしいところもあって、リハーサルでは着用せず本場だけ着ましたが、恥ずかしいなどと言っていてはだめです。というのも、着るものは演奏にも影響があり、今回は体の伸縮をやや制限される感じがあって、大きな動きを伴う部分で戸惑いました。やはりドレスリハーサルは大切です。

さて、これで今月の出番はおしまいです。次はいよいよ大ホールでのリサイタル。今日、私たちは小ホールでしたが、大ホールでは巨匠ムーティが振るマクベスのリハーサルをやっていました。ムーティと同じ会館にいると思うだけで幸せ。しかも、来月はムーティ大先生の楽屋を私が使うことになるのです。それまでどうか余韻が消えませんように。

ここから当日までは、闇に包まれながら地獄の訓練に突入です。しばらくこの世を留守にいたしますが、5月6日に東京文化会館大ホールにてお会いしましょう。