北九州でのソロコンサートを終え帰京しました。戸畑市民会館は2016年2月以来2回目でしたが、初めての際も会館の方々にたいへん親切にしていただき、とりわけ気持ちよく過ごせましたので、今回もおおいに楽しみにしていたホールです。ぬくもりのある木の内装とやわらかい響きは、約5年前の私には贅沢だと感じたものが、今回はフィットする感覚をつかむことができ、自分自身の経験と変化をホールが受け止めてくれたことを嬉しく思いました。
2020年も数多くの演奏家たちとステージを共にする機会に恵まれた一方、公開された完全なソロリサイタルは、これが今年唯一の公演でした。アンサンブルも好きですし、音楽を愛する人との共演を大切にしていますが、やはりソロは特別。自分はソリストなのだと実感します。
ひとたび幕が上がれば、途中休憩を15分設けてはいるものの、それ以外に退場することなく、弾くかしゃべるかを絶えず続ける125分間。体力と集中力と計画性が成否を分けるマラソン級の消耗戦は、私の最も得意とするところでして、それを思うがままに発揮できるソロコンサートはまさに天国です。
ふだんの年ならソロとアンサンブルの比率は半々くらいですが、今年は限られた公演機会を独り占めせず、少しでも多くの演奏家と分かち合いたいとの思いで、積極的に仲間を誘ってアンサンブルでの公演をしてきました。アンサンブル公演を通じ、これまでご縁のなかったお客様にたくさん出会えたことが、私の密かな孤独をふんわりと癒やしてくれました。
と、同時にアンサンブルでの私しかご存じない皆さまに、ぜひ私のソロを聞いていただきたいとの気持ちも高まってきました。どのような者が伴奏や制作を担っているのかを知っていただくことで、よりアンサンブルの醍醐味をご満喫いただけることでしょう。そういった意味でも、来年以降はソロコンサートにも一層の力を注いでいきたいと思います。
これにて2020年に予定された私の出番はすべて終了いたしました。来年以降も厳しい状況は続くと覚悟しながら、飢えて死ぬまで演奏家として果敢にあり続ける決意で、これまで同様、一切の給付金を受けず、お客様がご購入くださったチケット代金からの配分のみで活動を続けてまいります。音楽の守護神である皆さまに、よりよい一年が訪れますよう、心より願っております。
神田さん、リサイタルお疲れ様でした。今日は、どんな演奏なんだろうとワクワクした気持ちで座席に座りました。第一部は、チャップリンのライムライトから始まり、まさに映画音楽三昧。ニューシネマパラダイスに至っては、「あー、主役のトトが大人になって、幼い頃の自分が映写室のカーテンの隙間から映写技師のアルフレードと一緒に、スクリーンや館内のお客さんを観ていたのを回想しているシーンだ。」と映画の1シーンがはっきりと蘇り、神田さんの演奏のすごさにびっくりしました。いつもながら神田さんの圧倒的な演奏に驚かされます。第2部はガラリと変わりクラシック。ヴィヴァルディの「四季~“冬”第1楽章は、まさに死闘で(何と闘っている?)本当にものすごい演奏でした。(←言葉が見つかりません)神田さんも言っておられましたが、クラシックと言っても、その音符には、映画の戦闘シーンのような音があり、「え?これはクラシック?」「スターウォーズじゃないよね?」「私は今何を聴いているのか?」と錯覚することがたびたびありました。神田さんの音の創り方は、本当にすごいです。 この演奏会が今年最後とのこと、今年も大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願い致します。 どうぞ、お身体には気をつけられて。また、素敵な演奏を楽しみにしています。