台風、豪雨、大地震と、さまざまな困難の直撃を乗り越えてまいりました大阪茨木のシリーズコンサート。今年はCOVID-19の影響を受けましたが、もはやビクともしない太々しさも備わり、馴染み深くなった地下2階のコンパクトなホールにて、平穏な音楽空間を万事順調にお届けすることができました。
今年のゲストアーティストは、ソプラノの清水理恵。祈りを込めたアヴェ・マリアから、迫真のオペラアリアまで、大ホールでのリサイタルと遜色ないミラクルプログラムで、お客様を魅了しました。特に、猛暑の太陽をも霞ませるほどの明るいカンツォーネには「テノールなソプラノ」という斬新な異名をいただき、清水もご満悦。確かに、妥協せずどこまでもチャレンジしていく清水の姿は、男前なファイターかと見紛う瞬間があったほどです。
また、菊池玲那の躍進も印象的でした。歌のみならず、他者との共演では、自分の演奏を保持しながら、相手が放つシグナルのすべてを受け止め、即座に演奏へ反映させる感覚と技術が求められます。そのためには、どのようにでも舵を切れる柔軟性と余裕を残さなければなりませんが、こればかりは自分だけで稽古しても磨かれず、経験が物を言う領域です。
清水理恵には2度の稽古に付き合ってもらったのですが、初回は菊池の音楽に抗わずに歌っていたのが、次第に揺さぶりを掛けるようになり、菊池がなんとかそれに応えてくることがわかると、かなり大胆な掛け合いに発展。本場では更に自由になり、生々しいライブ演奏の醍醐味をお客様にお届けすることができたと思います。
また、こちらの会場はステージから客席がよく見渡せるので、曲間でお話ししている時にはお客様の表情を窺いながら、対話をしているような気分でマイクを握っています。マスク姿であっても、お客様の視線には大きなエネルギーをいただきました。また来年も継続開催を予定しておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。