宍粟、夏の合唱

8月23日の兵庫県宍粟市エレクトーンコンサートは、滞りなく大成功に終えることができました。開催までの道のりを振り返ると、困難と不安が次々と立ちはだかる中、よく開催できたものだと、改めて感慨深さに身震いする思いです。関係者一同の努力を讃えるとともに、ご来場のお客様、各地より応援してくださった皆様に感謝いたします。

合唱を伴う公演を安全に実施することが可能なのか。経験もエビデンスもない中で、熱意だけで突き進むわけにいかず、何度も中止の危機に直面しつつ、その度に知恵を絞り、最大限の慎重さで準備をした主催者には、本当に頭がさがります。

2か月も稽古が中断し、限られた時間での猛特訓に振り回されるだけでなく、あれはダメ、これもダメと制限だらけで、面倒ばかりを掛けた合唱団員たちの忍耐と結束にも、心底感服します。

そして入場制限数ギリギリいっぱいまでお集まりくださったお客様の愛とエールに、どれほど力をいただいたことか。これまで数えきれないコンサートに出演してきましたが、こんなにもドラマチックに心が動き、終わったことでホッとするステージは滅多にありません。

前日のリハーサル時には、出演者もスタッフも全員健康で元気に集合。いつもならリゾートへ向かう機内のように明るい賑わいで満たされるバックステージも、今回は鎮まりかえっています。互いを鼓舞することも許されず、気分の高まりに物足りなさがあるのではと心配しましたが、言葉は交わさなくても見事な結束があることが、リハーサルの集中力から伝わってきました。

当日は開演の1時間前に開場。客席がいつまでたっても静かなので、やはりお客様は外出を躊躇しているのかな、それも無理ないなと自分に言い聞かせたのですが、お客様はただ静かに開演を待ってくれていたのです。ああ、お客様は何もかも理解して応援してくださっているのだと実感できました。

であれば、あとはよい音楽をお届けするのみ。第1部はエレクトーン独奏です。演奏会ならではの空気感に包まれながら、気分よく演奏しました。

第2部はミュージカルシンガーの松本昌子と畠山典之とのステージ。松本とは共演を重ねて来ましたが、畠山とは今回が初共演です。私にとっても大切な場所である小樽出身で、子ども時代はエレクトーンに没頭していたという畠山。こうしてまたいい縁に恵まれ嬉しいです。ふたりの歌はたちまちお客様の心を掴み、会場は一気にあたたかい雰囲気に。さすがです。

そして第3部でいよいよ合唱団の登場です。幕が上がり、ポーズを決めた合唱団の姿が露わになると、客席からは待ってましたと破れんばかりの拍手。リハーサルを何度繰り返しても、この瞬間の気分はシミュレーションできません。きっと体に電気が走るようだったろうと思います。舞台上でも互いの距離を保ちながらも、全力で演唱をする団員の姿は、実に人間的で美しいもの。大興奮の嵐の中で幕となりました。

お客様にはブロックごとの退場をお願いし、最後のお客様をお見送りするまで、スタッフは気を緩めません。舞台裏では、もうお互い抱き合いたい気持ちを抑え、握手さえもできず、ちょっと寂しい気もしますが、ここで油断してはせっかくの努力が水の泡になりかねません。打ち上げもなく、粛々と片付けをするわけですが、それぞれの胸は大きな達成感で満たされていたことと思います。

来年の日程も決まりました。今回の実績をベースに、引き続き安全第一に進めてまいります。