7月17日に開催されたエレクトーンコンサートは、思えば私にとって今年初めての夜公演でした。昼夜どちらのステージが好きかと言えば俄然夜派なのですが、最近はすっかり深夜中心の生活をしていることもあって、外がまだ明るいというのにひとり午前3時のムードで演奏を始め、お客様を戸惑わせてしまったかもしれません。
ブルーライトひとつだけの仄かなアトモスフィアにしてもよかったかなと思いつつフォーレやラヴェルを弾き、真昼のギラギラした直射日光を空想しながらラフマニノフを弾いたのち、馴染みの映画音楽などを少々。お客様が心地よさを感じ始めたと見受けられたのはその頃から。私の演奏にはまだまだ説得力が宿っていないと反省しつつ、席を立たずにお付き合いくださったお客様に感謝。
そして、後半はソプラノ清水理恵を招いてのアンサンブル。それはもう待ってましたとばかりに客席は沸き、狙い通りのクライマックスとともに幕となりました。あとは、お客様、出演者、スタッフの全員が無事に帰宅して健康を保ってくれれば大成功と言えるでしょう。
そう、今や演奏会は幕を下ろせばそれでよしというわけに行きません。すでに私は演奏会が日常に戻りつつあり、ふたたび人前で演奏できる歓びを噛みしめる時期はとうに過ぎて、いかに問題を起こさずに開催するかが一番の課題になりました。
まず、自分自身が震源地になることは何としても避けなければならず、事実上の隔離生活を送るなど日常にも大きな影響がありますが、ここが揺らぐと他の一切もが揺らいでしまうので、徹底的な自己管理をおこなっております。
演奏会当日の運営は最も緊張感が高まります。主催者や会場の管理責任者と細かい協議を重ねながら当日の方針を決めていきますが、対策の内容は会場によってさまざま。前回これをやって効果的だったといった情報交換も、最善策を見つける上でおおいに役立っています。
また、お客様の声も大切にしています。例えば、今回は密閉空間に不安があるとの声を受け、開演直前になって、45分×2部の構成を30分×3部に変更。空調は外気を30%取り入れる仕組みと聞き、すなわち70%の空気が循環するなると空調だけでは不十分な印象があったので、演奏中も一部の扉を常時開放しました。
不安を持ちながらも思い切ってご来場くださったお客様に、演奏中も終演後も安心してお楽しみいただけるよう努めてはおりますが、安全な演奏会の実現は集まる人々全員がリスクに対する意識を保っていることが大前提です。お客様には数々の面倒なお願いにもかかわらずご協力いただき、心より感謝しております。
この先、年内は概ね2週間に1度のペースで演奏会が続きます。これは通常の半分以下のペースで、さらに座席数が半数以下であることを考えますとまだまだ縮少期間ですが、厳しい条件下で開催してくれる主催者に協力しながら、私の演奏を受け入れてくださるお客様に、心地よい安らぎのひとときと、ささやかな希望の種子をお届けしてまいります。