開演5分前。いつもなら、これから始まる演奏会への高揚とともに、身の引き締まる瞬間ですが、今回の宇部はずいぶんと気分が違いました。
私の役割のほとんどすべてが、すでに終わっている。あとは、みんなが見事にやってくれるだろう。そう思いながら、出演者の顔をひとりひとり眺めていました。
もちろん自分も演奏するのですから、そこに向けた意気込みは、いつも通り本能的に高まっていますが、それを確かめたり、どこからともなく沸き上がる緊張感をなだめたりするよりも、他の出演者が思い切り演じられるように、少しでも多くの勇気を与えたかったのです。
この催しに際し、主催者が私に依頼したのは、演奏だけではありません。彼らが主催する演奏会の200回目の節目にふさわしい、記念コンサートの企画制作という大役を神田将に託してくれました。
これまで199回の演奏会を彩って来たのは、思わずひれ伏したくなるほど立派な顔ぶれ。そうした方々とのご縁がありながら、あえて私を起用したのはなぜなのか。まずはそこからじっくり考えました。
人生、200回も演奏会に出掛けていれば、当然感性は潤い、耳も肥えます。自然と芸術に心が開くようになり、好きや嫌いを超越し、よいものを見極め受け入れる術が養われます。彼らにとって、目を見張るような高度な技術は、単なる道具のひとつでしかなく、それを使ってどう心を震わせてくれるのかを問う、たいへん恐ろしい観客なのです。そんな彼らと接していると、なぜこの世に音楽が存在するのかという永遠の謎が、一瞬解けたかのような気分になることさえあります。
さて、そんな彼らを満足させる力が私にあるのか。半ば逃げ出したい思いで出した答えは、たいした能もない私にできるのは、ひたすら誠実に手間隙惜しまず丁寧な仕事をするしかない、というものでした。
しかし、自分は腹をくくればそれで進めても、ひとりですべてをやるのは不可能。今風に言えばこんな生産性の低い仕事に付き合ってくれる人が本当に見つかるのでしょうか。
ところが、いつも不思議なことに、ちゃんといるんですね、熱い人たちが。
今回は宇部でコーラスをまとめてくれた佐藤華純と、この男なら舞台を一緒に作れると確信して声をかけた中井智彦が、それぞれ大きな役割を果たしてくれました。ふたりとも私とは初仕事でしたが、私は本当に大満足です。それに、主催事務局の皆さんも本気出して動いてくれ、途中、不自由や不都合を感じることまったくなし。気持ちのいい人たちです。
そしてそして、一番頑張ったのはコーラスの皆さん。100点どころでなく、もう150点あげます。8ヶ月間毎日努力を重ね、文句も言わずにのめり込み、見事やり抜きました。演奏しながら彼らの表情をみて、何度ハッとさせられたことか。ピュリッツァー賞の写真のような、ほんとうの人間の顔なのです。
そんな彼らとの美しい時間も、あと2時間で終わってしまう。開演の高揚より、後から来るはずの喪失感の方が勝ってしまいました。例えるなら、卒業式の朝のような気分でしょうか。
本番は全員で思い切り演奏しました。ぐんぐん調子を上げてくる佐藤、まるで何年も共演してきたかのように通じ合える中井、そして多様でありのままを尊重したコーラスが醸す不動の存在感。お客様が素晴らしいのは言うに及ばず。鳴りやまぬ拍手の中で、みんなそれぞれに思いがこみ上げてきたことでしょう。
みんなの晴れやかな顔を見て、私は役割を果たすことができたことに、深い安らぎを感じました。音楽が人と人を結びつける、その瞬間に貢献できるのは、音楽家としてこの上ない喜びです。
しかし、余韻に浸ってばかりはいられません。この秋は次々とステージが待っています。宇部での再会を願いながら、次の作品へと旅を続けていきます。
神田先生、宇部音鑑200回記念例会を大成功に導いてくださってありがとうございます。
神田先生の素晴らしい演奏と中井さん、佐藤先生の素敵な歌声と共に記念館のステージに立て、あんなにお客さんに喜んでいただいたことは、貴重で忘れられない体験になりました。
歌を覚えていく段階は毎週の練習が楽しくて仕方なかったです。
でも演技が入る頃になると段々に不安になったり弱気になったりしてしまいました。
そんな時に神田先生が宇部に来てくださり、一人一人の個性をもっと出しなさい、少々音程が外れてもいいから自由にやりなさいってアドバイスされ
とても気持ちが楽になりました。
観に来てくれた友達みんなから、その日のうちに素晴らしかったよ、感動したよ、宇部の公演とは思えなかったなどのメールが届きました。
その中で「頑張ってみんな主人公でした」と言ってくれた友だちがいました。
合唱団の仲間たちみんなが個性を出せたんだと
嬉しく思いました。
成功まで導いてくださった全ての方々に感謝、お客様に感謝、そして頑張った自分も褒めてあげたい、
神田先生、本当にありがとうございました。
こらからもずっと応援していきます、お身体に気をつけて音楽の素晴らしさを伝え続けて下さい。
神田さん、中井さん、佐藤先生そして糸賀先生と蘆田先生、合唱団員の皆さん、ありがとうございました。みんな素敵な顔をしていますね! 自分も舞台に立てて、本当に幸せでした。7ヶ月という期間、こんなに長い間合唱を取り組んだのは初めてです。ミュージカルナンバーを歌うのも初めて。74名という合唱団員数も初めて。何もかも初めてずくしの音鑑200回例会でしたが、本当に楽しかったです。神田さん、何度も宇部に来て下さり、本当にありがとうございます。少々音が外れても・・みんなが通り一遍等のことをしなくても良い、はずれることも大切。神田さんの指導は忘れられません、そしてコンサートの感動も。中井さん、レミゼの公演中、宇部へ来て下さり、ありがとうございます。神田さん・中井さんと一緒に練習したことで、コンサートへ人を誘うという、みんなの小さな心の炎が燃え上がりました。 そして佐藤先生、7ヶ月間本当にありがとうございました。先生の細やかな指導のおかげで、私達は自信を持って舞台に上がることができました。コンサートではみんな俳優・女優でした。終了後には、「期待していなかったけど(笑)すごかった!」「素人と思って会場に行ったら度胆を抜かれた。」などの感想の声が寄せられ、ちょっと鼻が…高くなりました。また、電話で予約されたお客様が、翌日、「本当に良い席をとっていただき幸せでした。コンサート素晴らしかったです。」とお礼の電話を下さったり、市内在住の方が、会場内がごった返してアンケート用の鉛筆を落としたので、家に帰り書きましたとわざわざ郵送でアンケートを送って下さるなど、本当にいろいろなところで感動の嵐が吹いています。神田さん、中井さん、佐藤先生、ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願い致します。