渡辺翁記念会館の気品

9月14日に宇部市渡辺翁記念会館で開催する宇部音鑑200記念コンサートまで、あと1カ月となりました。

現地での準備が着々と進んでいると知らせが入り、私の演奏準備もいよいよ最終段階に入ったところです。

このコンサートは、企画が持ち上がった時点から、すでに圧倒的な気合いが関係者から注がれて来ましたが、時が近づくにつれますます盛り上がりを見せており、いい波をつかんだなと感じています。

ふだんはどちらかというと控えめな宇部の皆さんに火が付いたと見え、合唱も裏方も皆さん本気も本気。本来先導役であるべき私の方が尻を叩かれているような気がします。

ソリストであり合唱指導を兼任する佐藤華純は、その小さな肩に相当のものを背負わされているにも関わらず、それを苦にせず楽しんでいるという頼もしさ。

そして、中井智彦もまた、期待を上回る男で、それを知れば知るほど私の要求が高くなるのを、面白がりながらトライしてくれるので、ますます私が調子に乗って注文が増えております。

当日、ご来場のお客様の反応が本当に楽しみです。

また、忘れてはならないのが、会場の素晴らしさです。渡辺翁記念会館は宇部の誇りであるばかりか、日本の音楽史にとっても貴重であり、優れた名建築としての存在感も兼ね備えています。

先日は、このホールでリハーサルをおこないました。準備の間、私はカメラ片手に館内の入室可能な箇所をくまなく見て回り、そこに満ちている「気」と対話したり、実際に柱や壁に手を触れて過ごしました。それは、森で大きな樹木に触れているような感覚です。

ホール内は昔の特急電車を思わせるフカフカのイスが並び、重厚感と当時のモダンが見事に融合した空間になっています。

舞台からの音はアナログレコードのような温もりがあり、ずっしりとした低音感も伝わってきます。

この空間なら、私たちが準備した演奏は、たいへん大きな効果を発揮するでしょう。

思えば、私たちの努力の仕方は、このホールが出来た頃の人々のスタイルに似ているような気がしてきます。格好つけているヒマがあったら、どんどん進め。やるだけやって当たって砕けろ。何しろ初めてのことばかりのコンサートですから、あと1カ月、猪突猛進でのぞみます。