あれから20年

1994年6月19日に新百合ヶ丘にある青葉幼稚園で、エレクトーンとピアノの小さな演奏会がありました。ささやかな花で飾り、パイプイスを並べただけのシンプルなこの空間こそが、私の演奏家としての第一歩でした。

この演奏会を設けてくれたのは、およそ音楽とは縁遠い人たち。怖いもの知らずだからこそ出来たのかもしれませんし、それ以上に私のことが憐れだったのかもしれません。神田将の演奏を私たちの手で広めていこうよ。そう言って、助けてくれました。

以来、私はどこにも属さず、一度の営業活動もせず、無数の出会いに恵まれながら、音楽人生を歩んで来ました。音楽の専門教育を受けず、エレクトーンという楽器でクラシックの舞台に挑むのは、それはそれは険しい道のりでした。

でも、いつでも私の周りは助けてくれる人、支えてくれる人、励ましてくれる人で溢れています。これほど扱いにくく、常軌を逸した私であるにもかかわらず。

20年も続ければ、少しは気が楽になるのかと思っていましたが、とんでもない。ますます道は険しくなり、求めるものに近づくどころか、まるで遠ざかっていくかのように感じることもしばしばです。

なのに、音楽ほど私を夢中にさせてくれるものはなく、この先もひたすら音楽とともに生きていくつもりです。