甘いスイカと清らかな第九

兵庫県宍粟市での第九演奏会が終わって、1週間が経とうとしています。昨年は30年ぶりの第九復活。そして今年は結成40周年の節目とともに、2年連続の第九ということで、張り切って稽古や準備に勤しんできました。2回目は初回よりも難しいもの。演奏面でもそうですが、特に運営は気を抜けません。しかし、宍粟らしく参加者が一丸となった準備が功を奏し、大成功させることができました。

合唱団の顔ぶれは、昨年から引き続いてのお馴染みさんに、県外からの参加者や高校生などのニューフェイスが加わりましたが、宍粟っぽいアットホームな雰囲気は健在。前日のリハーサルでホールに集まった時、久しぶりに全員が顔をそろえたところを見たのですが、2年目ともなると顔つきが変わるということを強く実感しました。私服で立っていても、なんかこうステージの顔というか、西洋の音楽が体に染みついた顔というか、それだけでも説得力があります。

実際に声を出してリハーサルをしてみて納得。声のまとまりや滑らかさが昨年とは大違い。常任の土田景介さんの指導がいいのはもちろんでしょうけれど、それを受け止めて実践するそれぞれの力も、どんどん磨かれている証拠だと思います。

当日も午前中に一度だけ合わせをし、残りの時間は終演後の交歓会の準備など、それぞれの役割を進めながら、和気あいあいと過ごしていました。なんとも楽しそうな様子は、町のお祭りの準備に通じるものがあります。毎年、手作りの料理が楽屋に振舞われる宍粟ですが、今回は私が体調不良のため、おかゆと果物のみに。そのおかゆの美味しいこと。それに、朝採ってきたばかりのスイカは、皮の白いところまで甘かったです。

こうした和やかなムードも、本番が始まるとたちまち音楽会の空気に。お盆明けの田舎のホールですから、多少空気が緩むのはご愛敬と覚悟していましたが、エレクトーン独奏の間も、会場が一体となった集中力で聴いてくれました。それがはじけたのは、第1部の最後。今年は男性ソリストとテノール歌手でもある指揮者の3人に歌ってもらった時の熱気と言ったら!

やはり歌ってすごいですね。私が必死で60分演奏した後、たった3分歌ってもらっただけで、拍手はそれまでの3倍くらい大きくなり、やっと目が覚めたという感じの盛り上がり方でした。

でも、これも織り込み済み。最後はこのように盛り上がるとわかっているから、複雑だったり繊細だったりするクラシック作品を気兼ねなく並べることができましたし、お客様には緊張から解放まで幅広い気分を楽しんでもらえました。続く第九への効果もよかったと思います。

本番後の交歓会では、伝統芸能や餅つきも披露され、たいへんくつろいだ雰囲気でした。合唱団を代表して何人かの団員がスピーチをしましたが、それがとても印象に残りました。第九を歌う意味や目的はひとそれぞれ。でも、ひとりひとりにドラマがあって、譜読みから本番までの道のりから得たものをしみじみと味わっていることがわかりました。初参加の高校生のスピーチも素晴らしく、若者の心の逞しさに大きな希望を感じました。

さあ、来年も力を合わせて成功させましょうと、気持ちをひとつにしてお開きになった今年の宍粟第九。この熱いドラマはまだまだ続きます。