もうすぐ10周年を迎えるSongs from My Heart。いつも一貫したコンセプトに沿った内容でお届けしています。何を表現すればいいかハッキリしているにもかかわらず、いつも試行錯誤の繰り返しでしたが、9年続けてやっと形が見えて来ました。音楽は、何をするにも、1曲を満足に弾くにも、最低10年は掛かるようです。それでは、6月29日に行われた公演をフォトアルバム風に振り返ってみたいと思います。
オープニングはエレクトーンソロから。私はホスト役なので、開演から終演までずっと出ずっぱりです。ソロはエレクトーンを目立たせる格好の機会ですが、ここぞと張り切っては全体の雰囲気が乱れますので、あえてさりげなく一歩引いたくらいの立ち位置を心掛けています。
テーマは「不朽の名旋律」。冒頭のソロは自由に選んでいいとされていたので、次に続く中安さんの歌の世界につながりやすく、爽やかな曲にしようと思い、ペールギュントの「朝」を選びました。
そしてオリジナルの間奏曲に乗せて中安千晶さんが登場。単身イタリアへ渡り研鑽を積んだ成果あって、表現力が一段と豊かになりました。「夏は来ぬ」、「椰子の実」、「浜辺の歌」と夏らしい3曲を。シンプルな伴奏で心地よさを演出しました。
そこに松浦藍さんが加わり、対面しての振り付け付き「茶摘み」。リハーサルでわかったのが、「茶摘み」の振り付けにも地域によって違いがあること。いまひとつうろ覚えだった中安さんと松浦さんに「演技指導」をしたのは、フルートの藤原さん。鳥取流「茶摘み」の完成です。続いて「故郷の廃家」「みかんの花咲く丘」を。
松浦さんのソロは「オンブラ・マイ・フ」、「天使の糧」、歌劇ファウストより「宝石の歌」。「オンブラ・マイ・フ」はバロック風に、「天使の糧」はオルガンの音色を中心にエレクトーンならではの色彩感を加えて、「宝石の歌」はオペラさながらにオーケストラの雰囲気でと、さまざまな音世界を瞬時に旅できるのは、エレクトーンならでは。でも、ピアノ伴奏で歌う時と比べて、歌い手も変化の幅を大きく持たなければならないので大変だと思います。
休憩をはさんで、第2部もエレクトーンソロからスタート。動物の謝肉祭から「水族館」を演奏しました。不思議な音のオンパレードで、ティムバートンの映画のような雰囲気をイメージしてみました。
そして藤原美沙季さんがピッコロを持って登場。オーケストラではお馴染みのピッコロですが、いざソロ演奏を聞くとなると、なかなか機会がありません。ピッコロ単体の魅力をたっぷりと味わえるのも、このコンサートならではです。演奏したのは、「ピッコロのためのカプリス」と「鳥と薔薇」。どちらも軽快なポルカ調の楽しい曲です。ピッコロの伴奏では、音色の選び方に苦労します。伴奏を華やかにしてしまうと、せっかくのピッコロを埋もれさせてしまうので、シンプルな音色の中だけで、幅広い表現をしなければなりません。その点、新しいエレクトーン02になって、ひとつひとつの音色の表現幅が広くなったので、やりやすくなりました。
フルートの中川朋さんは、ショパン特集として「ノクターン No.5 嬰へ長調」と「シンデレラの主題による変奏曲」を演奏。ピアノ用のメロディーをフルートで吹くに当たり、実際にピアノの原曲を演奏して研究したとのこと。伴奏もピアノの音色一本で。変奏曲は、フルートの魅力がとてもよくわかる1曲でした。
各演奏者には必ずインタービューコーナーがあります。最初の頃は話すのは苦手と言っていた皆さんですが、最近は調子に乗り過ぎて困ることもあるほど。演奏者の素顔が垣間見れたり、演奏曲に関するエピソードなどが聞けるトークコーナーは、会場の雰囲気をリラックスさせる効果もあるようです。
プログラムの最後はフルート2本で「ウィリアム・テルの主題による華麗な二重奏曲 」を。お馴染みのメロディーが次々に表情を変えて飛び出す、とても聞き応えのある作品です。
こうしてプログラムを一通り演奏し終えてみて、これまでになく落ち着いている自分に気付きました。客席からはそう見えないように気を付けていても、これまではギリギリ精一杯の自分がそこにいるパターンばかりでしたので、いつになくいい気分。
でも、よく考えてみたら、これは演奏した作品の効果なのだろうと思いました。毒気のない正統派の作品のみで構成され、それはまるで軽井沢で迎える夏の朝のようなイメージ。あるいは美しい陶磁器で楽しむアフタヌーンティー。とにかく、この日の渋谷は都会のオアシスそのものでした。
最後は会場の皆さんとご一緒に「夏の思い出」を歌っておひらき。いよいよ来年は10周年!エレクトーンシティ渋谷にて3月22日(日)14:30開演です。どうぞご期待下さい。