世界の名指揮者を模したパフォーマンスで有名な好田タクトさんが手掛ける「タクト音楽祭」に出演いたします。
好田さんとは仙台クラシックフェスティバルでご縁があり、名古屋での演奏会にゲストでお招きしたことがあります。その時は、会場が嵐のような盛り上がりになり、出演者たちも圧倒されっぱなしでした。
今回は、好田さんがライフワークにしている「タクト音楽祭」の第5回目。実に7年ぶりの開催というこのシリーズは、私たち音楽家に置き換えればリサイタルのようなものだろうと思います。
それだけに好田さんの意気込みは相当なもの。そして、応援に駆け付ける芸人さんたちも豪華な顔ぶれです。私もその勢いに巻き込まれ、お祝い替わりに無理難題をお引き受けしました。
催しの楽しい部分は、好田さんの投稿や実際のステージをご覧いただければ、それはもうダイレクトに実感できるに違いありませんので、ここでは裏話というか、演奏家が芸人さんに加わって演奏することの難しさをお伝えします。決していやではありません。難しいというお話です。
この催しで私が演奏する曲目は次の通りです。
ワーグナー/タンホイザー大行進曲
スーザ/星条旗よ永遠なれ
カバレフスキー/組曲「道化師」(抜粋)
R・シュトラウス/楽劇「サロメ」より”七つのヴェールの踊り”
コズマ/枯葉(即興)
葉加瀬太郎/情熱大陸
エルガー/威風堂々第1番
ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
ベートーヴェン/交響曲第5番 第1楽章
バッハ/G線上のアリア
ハチャトゥリャン/剣の舞
ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」(抜粋)
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」前奏曲(短縮版)
いかがでしょうか。演奏するだけでも、リサイタル並みに体力が要ることが、おわかりいただけるでしょう。
体力だけではありません。もちろん最大級の集中力と高度な精神コントロールが必要です。
しかし、この催しは演奏会ではありません。音楽に大きな比重を置いてはいますが、タクトさんの芸が主なのですから、音楽が主張し過ぎてシリアスになってしまってもいけませんし、かといって音楽を冒とくするような演奏をすることも許されませんので、絶妙な立ち位置を見つけ出すのがとても難しいです。
演奏のテンポひとつとっても、要求されるがままに従うのではなく、音楽的な整合性を割り出したうえで応えなければ、音楽として成立しなくなります。
しかし今、この作業が私には面白くてたまりません。いつもの自分ならまず選択することのない解釈を、新しく自分の一部として受け入れるのは、また新しい命を宿したかのような興奮でもあります。
文字通りの死闘。ぜひご来場ください。
タクト音楽祭 Vol.5 ボードビルの逆襲
2017年10月22日(日) 開場/11:30 開演/12:00 終演/16:30
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