旅のはじまり

今の生活は旅の連続です。一年のうち200日以上を旅先で過ごすようになって久しいのですが、
旅には毎回新しい発見と驚きが満ちていて、飽きることがありません。

同じ生活の繰り返しに耐えられない性格であることを悟ったのは、物心つくと同時でした。

子供のころには、将来の職業を決めていませんでしたが、できることなら世界中を渡り歩くような仕事をしかったので、そういった意味でも、夢は叶えられられたと思っています。

学生時代までは、あてもなく、ただ気の向くままにどこまででも旅をしました。
ただ、時折空を見上げて、どうやら生きているうちにこの星を遠くから見ることは難しそうだと嘆くこともありました。

小学生のころ、一番の楽しみは鉄道の時刻表を眺めることだったので、まだ自分で旅にでる経済力がない間は、そうして空想の旅を楽しんでいましたが、それでは満足し切れません。

年に数回、家族と旅をする時、それはもう有頂天になり、その日が来るのをカレンダーとにらめっこしながら待ち侘びたことを、今でもはっきり覚えています。

やがて、成長とともに、家族との旅とは別に、ひとりきりでチャレンジするような旅へと興味が移っていきました。

時刻表と地図を広げて、ディスティネーションを決め、限られた予算内でいかに充実した旅を組み立てられるかを何度もシミュレーションし、納得したところで実行に移すのです。

こうして小学生の間に日本中を駆け回り、今思えば無謀ながらも、貴重な体験をすることができました。

見知らぬ土地で財布をなくした時に世話になった土産物屋のおばちゃんはどうしているのかな。

夜行列車寝台の寝台が隣同士になり、みかんと本の栞をくれた兄ちゃんは元気かな。

いろいろな思い出が次々と思い出されます。

次第に海外にも足を踏み出し、冒険のような体験を重ねてきました。

それらの旅は、ほとんどがひとりで行ったものです。
誰かと一緒の旅も楽しいものですが、私の場合、人を楽しませることに気を取られて、自分の目的を見失ってしまうことが多いのと、ひとりで考えたりしながらマイペースで行動したいので、思い立ったようにひとりで出かけることがほとんどです。

でも、今の旅はほとんどが仕事の旅です。
スケジュールが細かく決められており、目的地での役目をきちんと果たさなければなりません。

以前のように開放感を求めたり、考えごとに耽る機会は減りましたが、それでも、旅は私を成長させてくれる大切な師です。