パリのはずが高崎

10日前のスケジュールでは、今頃パリにいる予定でした。久しぶりに連絡があった友人から「パリで会おう」と誘われ、3日くらいなら留守にしてもいいかと思い快諾。フライトもホテルも決めてあったのですが、今回は見送ることにしました。というわけで、以前のパリ写真を・・・

パリ行きを取りやめたのは、群馬県高崎市にある高崎楽器さんで開催されるエレクトーンコンクールの店別大会に招かれたからです。

実は高崎楽器さんとはこれまでご縁がありませんでした。細かく説明するとちょっと複雑なので省きますが、ご縁とご縁が繋がって今回のお話を頂いたので、これも何かの引き合わせかなと思い、お引受けしました。

当日の朝は暗いうちに目が覚めてしまって、そのまま空が次第に明るくなるのを眺めていました。6時にはルームサービスの朝食が届けられ、運んで来た顔なじみの係とちょっとした雑談をしてから、焼きたてのパンで腹ごしらえ。7時過ぎにパークハイアットを出発し、新幹線で高崎に向かいました。

高崎駅からは出迎えた社長の車に乗り、会場となる江木総合センターへ。コンクールが行われるのは、このセンターのロビーで、すでに出演者や家族が集まり始めていました。

ところで今日の私の役割は何でしょう。特に知らされないまま訪れたので、まずはミーティングです。

それによると、私は審査員長、講評、表彰状授与、ゲスト演奏が担当とのこと。演奏以外の部分は経験が少ないのですが、なんとかなるでしょう。

いよいよコンクールが始まります。エントリーしてるのは13人のこどもたち。センターロビーに用意されたエレクトーンは、特別な音響設備には接続されておらず、本体に付属してるスピーカーだけから音が出ているので、ちょっと迫力に欠けますが、アットホームな雰囲気の中スタートしました。

ひとりひとり大好きな曲を選び、それぞれの思いを込めての熱演には、いつも心動かされますが、今日はただ聞くだけでなく審査をして順位をつけなければならないので責任重大です。

気持ちとしては全員を次の大きなステージで演奏させてやりたいところですが、他の審査員と協議しながら、気を引き締めて2人の代表を選びました。

その後、全体の講評をして表彰状を渡し、続いて私の演奏タイム。
これまで様々な環境で演奏してきましたが、音響なしというのは初めて。私の持ち味である重量感のある響きは出せそうもありません。でも、今日熱演してくれたみんなと同じ環境で演奏することに意味があると思い、私なりに弾き方をコントロールしながら、なんとか演奏を終えました。

選ばれた2人の代表には、私のすぐ脇にイスを用意し、その「特別席」で聞いてもらいました。細かいコントロールや息遣いも感じて欲しかったからです。

これでコンクールはおひらきですが、代表2人には居残りしてもらい、個別に稽古をつけました。これは予定していなかったことですが、せっかく代表になったのですから、よりよい演奏をしてもらわなければなりません。

本番の演奏で気になったことを指摘し、今日、この場で改善してもらう必要がありますし、これから次の大会当日まで維持できるモチベーションを与えたかったのですが、ふたりとも私のアドバイスをよく聞いて、たちまち見違える演奏を聞かせてくれました。

やはり演奏の要はタッチ。打鍵のスピードと圧力を自在にコントロールするテクニックはエレクトーン演奏には不可欠ですが、それを正しく身につけるのは簡単なことではありません。それでも、これを避けて通っていては、いつまで経っても心に伝わる演奏はできませんので、早い機会に習得することを強く勧めます。

あと、こどもの演奏で気になるのは、イスの位置です。成長につれ体が大きくなるのに、同じ位置にイスを置いて弾いていたのでは、どんどん足がつっかえてしまいます。イスの位置と座った時の姿勢を毎回確かめ、体と鍵盤との間の距離を常に適切に保つよう心掛けましょう。

日曜日は父の日でしたね。前にもお伝えした通り、私にはこどもがおりませんが、今日は生まれて初めて父の日ギフトをもらいました。

父のように慕われる資格が私にあるかを問えばまったく自信がありませんが、こんな私にも父親へ向けるべき視線を送ってくれる人がいることを、素直に嬉しく思いました。これを機に、またこどもたちに接する際の気持ちやモチベーションがパワーアップしそうです。