謎の筋肉痛

15日の演奏会を終えて自宅に戻り、ホッと一息つく間もなく、次の演奏会に向けた準備に気持ちをシフトしなければならなかったので、そのままの勢いで段取りしたり、少し楽器に向かって編曲の方針をまとめたりしていたら、もう朝方でした。

考えてみたら、15日は食事らしい食事をしていませんでした。朝、会場入りしてから弟子が買って来たコーヒーを飲んで、そのままリハーサルに突入。昼食にはちらし寿司が用意されていましたが、12時からドレスリハーサルが予定されており、私が最初の出番になっていたので、直前の食事は控えて後で食べるつもりでした。

でも、その後も他の人たちの演奏を聞いたり、楽屋では皆さんの気持ちを落ち着かせるために話しをしたりと、結局、食事をする時間はありませんでした。

みかん2個と、ドーナッツをひとつ。それで本番を乗り切り、片づけをして帰宅。すでに食事のリミットタイムは過ぎていましたし、また近所の蕎麦屋でTKG風親子丼を食べさせられるのも気が向かなかったので、食べずに済ませることにしました。

不思議と空腹感もなく、疲労感もそれほどありませんでした。

蝉が鳴き始めた頃、少し仮眠を取ろうとベッドへ。1時間ほど眠ったでしょうか。起き上がってみたら、ひどい筋肉痛でした。続いて日課の体重測定をしたところ、前日より約3キログラムも減っていました。

もしかして脱水症状?と思い、まずは水分補給。でも、なぜこれほど筋肉痛なのか、理由がわかりません。しかも、かつてない疲労感です。

これまでどんなに過酷な演奏会でも、これほど疲労感を覚えたことはありませんし、ランニングや水泳でもこれほど疲れません。1年で最も緊張するリサイタルの後でさえ、気の滅入り方はともかくとして、肉体的には今日より元気です。

これらの原因を考えてみましたが、理由はひとつしかありません。
15日の演奏会に際し、自分の演奏以上に周囲のことに神経を使いながら、自分自身もリサイタル的な演奏をしたという、ダブルのプレッシャーがあったからでしょう。

私はリサイタルの日には、ひどく自分自身のことにとらわれ、気持ちも体も硬くなっていることを自覚しています。でも、15日にそれ以上の精神的なプレッシャーを体験したことで、「リサイタルなんて、自分のことだけに集中できるのだから、とても楽だし、ありがたいシチュエーションだ」という風に、考えを改めることができました。

人間、自分のことばかりに溺れると、視野が狭くなるばかりでなく、判断も偏りがちになりますね。自分のことに集中したい時に限って、人から手助けを求められたりするものですが、その度に私は苛立ち、複雑な気持ちになっていました。今思えばなんとケチくさくて小さな人間だったことか。

信念があれば、自分のことはどんなに追い込まれたって投げ出しはしない。実際、「泣きたいのは私だ」と思いながらも、人の泣き言を聞き続けて来ましたが、振り返ればそれでよかったのだと考えられるようになりました。

今回も1時間の仮眠で、ボロボロに疲れ果てた体と引き換えに、ちょっとたくましくなった精神を手に入れたような気がします。夢でなければいいけれど・・・

さて、作業に戻ります。夜はこれからです。