夜明け前の月が淡い光を海に落とし、どこか別世界への道が開かれているかのよう。遠くからでもかすかに感じられる波の揺らぎだけが、この光景が静止画でないことを感じさせていました。
今朝、暗いうちから目覚め、三世代親子のような三人組で、松林と池に面した温泉へと出向いた時のこと。ほとんど音のない露天の湯船に浸かっていると、幾羽かの野鳥が池に降り立ちました。
まだ光が弱いので、鳥たちのシルエットしか見えないのですが、その機敏な動きといい、周囲に払う注意の鋭さといい、まさに野生の生き物だけが持つ輝きを放っていることがわかります。
おそらくこの先、途方もなく長い旅路へと飛び立つ鳥たち。ボケッと湯に浸かる人間を見て、さぞや怠惰な動物だと感じたことでしょう。あの鳥たちのように命を輝かせるには、どう生きるべきなのか。そんなことを考えさせられる朝風呂でした。
朝食をすませ、お名残り惜しくシーガイアを出発。目指すは小林の西村楽器です。エージェントIZUが借りてきた、かぼちゃの馬車のようにコンパクトな車に、まるで夜逃げのような大荷物を積み込み、それらに埋もれるようにしての道中。でも、不思議と窮屈にも不快にも感じませんでした。
予定より少し遅れて到着した西村楽器では、店長さんをはじめ、3人のスタッフが出迎えてくれました。会場となる2階ホールは、すでにいつでもコンサートが始められるよう準備が整っています。
軽く音だしをしながら、最も効果的に響くよう、楽器やスピーカーの位置を調整して、スタンバイ完了。1週間ぶりのソロ演奏なので、気合い十分です。
今回は少ないお客様でのサロン的なコンサート。ここのところ大きな会場ばかりだったので、ちょっと振舞い方がぎこちなかったかもしれません。
また、お客様ひとりひとりと目が合ってしまうほどの近さですので、お客様の方がかえって気恥ずかしかったかもしれません。
1曲終えた後のトークで、エレクトーンを教えている、あるいは学んでいるなど、エレクトーンをよく知っている人がどのくらいいるかを尋ねてみました。概ね半数程度が手をあげてくれました。
続いて、神田将を知っている人に手をあげてもらいましたが、たったひとりだけでした。
よく知りもしない人の演奏を聞きに朝から集まってくれるなんて、本当にいい人たちなのだろうと思います。
コンサートは約90分。まるで大ホールで演奏する時のようなエネルギーで熱演しました。ここのところ4人のアンサンブルに慣れてしまったので、ソロだと寂しく感じることもありました。
更に、オフだった米津さんも客席で演奏を聞いてくれていたのですが、エレクトーンの横にグランドピアノもあったので、いきなりステージに呼びこんで、2曲ほどアンサンブルしてもらいました。
このサプライズにはお客様も喜んで下さったと思いますし、私も一層楽しく演奏できました。
終演後は、そのまま会場をお借りして、名古屋のリハーサルをしました。テンポ変化や表現などを、私から米津さんに細かくお願いしていくのですが、米津さんはとても呑み込みがはやくて、本当に助かります。
帰り際に、1階のショールームで月刊エレクトーン12月号を見つけ、購入しました。月刊エレクトーンは、その名の通り、エレクトーン情報が満載の月刊誌です。
この号には10月5日のリサイタルの様子が、カラー1ページで紹介されています。編集部のベテラン記者が来場し、記事に採用してくれました。私自身が立っていたステージなのに、こうして雑誌を通じてみると、とても客観的に感じることができます。あまりメディアに取り上げられることがないので、今回の記事は本当に嬉しく思いました。
月刊エレクトーンは全国にあるYAMAHAの特約楽器店で入手することができます。12月号は980円。エレクトーンを弾かない人にも、私を通じてエレクトーンを知ってくれた人にも、興味を持ってもらえる話題がたくさん書いてあります。この機会に、ぜひ読んでみて下さい。
小林を後にして、ふたたび薩摩川内に戻って来ました。明日からはまた学校巡回コンサートで子どもたちと一緒に過ごします。