手作りリースとおさかなづくし

ステージが待っている!
そう言い聞かせて動こうとしない体と朦朧とした頭を奮い立たせ、エイッと気合いを入れてベッドから出さえすれば、あとは音楽家としての私を保つことも、そう難しくはありません。

ただ、熱か高いので入浴は控え、寒さを感じないようにしながら身支度を。そして向かった旭小学校では、またひとつ、素晴らしい思い出が増えました。

旭小学校は、串木野と薩摩川内の間にある、峠の小さな学校。全校生徒合わせても30名に満たないのですが、校舎や体育館は充実しています。幼稚園も付帯しており、その幼稚園児20名も加わって、私のコンサートを聞いてもらいました。

今日はトリオを離れて、ソロのコンサート。振りかえれば、姜建華さんのツアー、パーカッションを含む4人アンサンブル、そして昨日までのトリオと、ここのところ賑やかなユニットでの演奏が多かったので、ソロが寂しく感じます。

でも、アットホームな峠の学校でのコンサートですから、今回はソロというコンパクトなスタイルがぴったりだったかもしれません。

選曲にも工夫を凝らしました。幼稚園児に演奏時間の長い曲ばかり聞かせるのは気の毒ですので、壮大な曲は少なくし、イメージしやすく美しさや楽しさが際立つ室内楽的な小品を中心に、みんなで体を揺らしたり、手拍子で遊んだりできる曲を取り入れました。

ここでも、「せんくら」での0歳児からのコンサートでの経験が役に立ちました。

それにしても、昨日の第一鹿屋中学校で、スポーツマンのように毅然と話し、演奏していた私と、今日の「うたのおにいさん」的な私が、同一人物だとは自分でも信じられないほどに大きく違っていました。

終演後、子どもたちから贈られた、手作りのクリスマスリース。裏には私へのメッセージが綴られています。大切に持ち帰ろうと思います。

そして、午後からは串木野小学校。同じ市内で、距離もさほど離れていませんが、こちらは児童数600名以上の大きな学校です。

体育館も校舎も古いのですが、趣きが感じられ、私が好きな雰囲気でした。舞台後ろに掲げられた看板も嬉しかったです。

思えば、私が小学校で行ったソロコンサートとしては最大人数かもしれません。繊細な曲も弾きたいのですが、この広さと環境ですと、最後列まで微妙な表現を伝えきるのは困難だと判断し、ダイナミックな曲を中心に選曲しました。

途中では、私がクラシックを演奏する理由や、その魅力についても説明し、こうした作品を楽しんで聞くコツも伝えました。

後半に進むにつれ、私も会場もどんどん盛り上がり、とても気持ちのよいコンサートとなりました。

楽屋に戻った私は、とたんに倒れ込むようにしてイスに崩れました。でも、すぐに楽器を分解してケースに収納しなければなりません。ふたたび朝と同じように踏ん張りました。

串木野では、学校の先生方はもちろん、教育委員会の担当者さんが、申し訳ないほどによく手伝ってくれ、おおいに助かりました。感謝しています。

串木野を後にして、ふたたび国分まで車で移動。約1時間半の道中、眠りはしませんでしたが、ずっと目を閉じて体力を保つよう心掛けました。

ホテルではヘッドコンシェルジュが出迎え、部屋まで案内してくれました。私の体調のことも気遣ってくれ、いつもなら強がりを言うのですが、今回はそれもできませんでした。

すぐに眠ろうかと思いましたが、食べないと体力が持たないと皆さんが心配してくれるので、うどんなども用意できるというホテル内の日本料理店へ。

軽食のつもりが、メニューを見ると欲張ってしまい、おススメの特別懐石を注文。比較的消化のいい、シンプルな料理が多く、イスから転げ落ちそうになりながらも、おいしく食べました。

先付けに始まり、

かまくらのような氷の器に入ったお造りや、

鯛の頭が入った骨蒸し、

ぶりの土瓶蒸し、

お肉に、

お菓子まで、

どれも手間暇惜しまず素晴らしい出来栄えでした。これで栄養補給も万全。あとは睡眠でしょうか。

その前に、はるばる鹿屋から応援に駆け付けてくれたエレクトーン講師さんに、差し入れでいただいた「マグロ最中」をひとつ。

昨晩の「マグロづくし」のインパクトがあまりに強く、こちらのお菓子を頂いた瞬間、「え、最中の中身がマグロなんですか?」と聞いてしまいましたが、カタチがマグロなだけで、中はふつうの餡とのこと。それなら大好物です。なかなかカワイイ最中です。

明日もまた長旅ですので、今日も早く休みます。今のお部屋はおっさんの影響もなく静かで快適ですから、明日にはすっかり元気になれるでしょう。さ、熱々の生姜湯と、一番高いユンケルをグイッと飲んで、おやすみなさい。