コンサートのある当日としては、今朝がこれまでで最も体調が思わしくなく、降板も真面目に考えましたが、舞台には背は向けたくありません。
なるべく視線を動かしたり、話したりしないように気をつけながら、できるだけゆっくりと支度をし、なんとかホテルロビーまでたどり着きました。
まっすぐに歩けないほどフラフラでしたので、体調不良なのがチーム全員にバレバレ。皆さんに心配をかけているのが申し訳なくて、つらかったです。
沖永良部島へ向かうため、まずは鹿児島空港へ。週末の空港は結構な人で賑わっており、私の周囲がビックリハウスのようにぐるぐる回って見えます。
ランチを兼ねたミーティングを持ちましたが、私は薬を飲むためにスープとヨーグルトだけに。もし、私がステージに立てない状況になったら、波多江さんと米津さんのふたりで乗り切ってくれるよう、デュオでできる曲のピックアップと段取りまで付けました。
定刻通りに出発した飛行機は、たった36席しかないプロペラ機。機内はほぼ満席ですが、カリブ海へ向かう飛行機のような陽気な雰囲気が感じられます。
飛び立ってすぐ、噴煙をあげる桜島が見えました。その時まではカメラのシャッターを切る余裕がありましたが、すぐにダウン。乗り物の中で眠ることは滅多にない私ですが、少し休みました。
のんびりとした沖永良部空港では、和泊町の教育委員会の方々が出迎えてくれ、そのまま今晩のコンサート会場へと向かいました。
会場では今回もエレクトーンを貸してくださった「さくら音楽教室」主宰の関根さゆり先生も待ち構えてくれていました。
すでにセッティングが仕上がっていたので、早速、波多江さんと米津さんは音だしを始めましたが、私はしばらく安静に。
やっぱり私はステージ人間なんだとつくづく思うのは、楽屋で待機しているうちに、気持ちがどんどん舞台に向いていくところです。
弾いてみたら、なんとかなりそうな手応えでしたので、予定通り出演する決心をしました。
リハーサルを済ませると、波多江さんと米津さんは、教育委員会の方のご厚意で、美しい海を眺めるために海岸へ案内してもらうことに。
私は会場に残って、ソロのレパートリーを幾つか弾いて、鈍った感覚を修正したり、弾く歓びを呼びもどしたりするのに時間をつかいました。
やがてスタートした本番。子どもたちよりも大人の方が少し多い感じのお客様。親しみのあるスタイルにするか、エレガントな雰囲気を保つのか、判断が難しいところです。
お客様の反応や聞き方からは、下手にフランクな雰囲気にするよりも、濃密な内容のきちんとしたコンサートとしてお届けする方が、より堪能していただけるだろうと感じました。
私たちトリオメンバーにとっても、22日からスタートした鹿児島県内のコンサートは今回が最終回ですので、格別の感慨深さを持ってステージに臨みました。
ぴったりと息の合ったアンサンブル、全員汗だくで弾きまくるダイナミックさ、そして演奏することを心から楽しんでいるという輝き。
普段ののんびりとした島の生活には、かなりスパイシーなステージだったかもしれませんが、お客様はそれを快く受け入れて下さいました。
終演後は、同じ会場で、関係者たちとともにレセプションパーティ。
そこでも島の皆さんの温かいハートに触れ、この場にこうして共にいることの歓びや、巡り会えた幸せを感じながら、心温まるひと時を過ごすことができました。
明日は第1便で島を離れますので、私にとってはコンサート会場が島滞在のすべてです。
出会った人それぞれの顔と表情を心に刻んで、どんなに美しい風景にも負けない、島の思い出にしたいと思います。