Tokyo, my home town

沖永良部島の朝は神秘的でした。筆が描いたような雲が流れ、その合間から時折顔を出す太陽が、海面を照らします。まるで海水がプラチナでできているような鈍くも美しい輝きでした。

南国らしい樹をこうしてシルエットで見るものステキです。


日が差さなくても、海の水が澄んでいるのがわかります。


サンゴの岩場には、小さな花が無数に咲いていました。

朝にはこうして散歩ができるくらいに元気でした。まだ人のいない和泊町のメインストリートを歩きながら、ここ2週間で体験した体調不良のパターンを考えたところ、長い移動の後に具合が悪くなるというのがお決まりのパターンでした。1日5時間の車移動や、小さな飛行機に乗った後などに、急な体調変化が表れます。

昨日は車と飛行機を乗り継いで沖永良部に来た直後にリハーサルでしたので、かなりこたえましが、夕べは終演後の移動がなく、すぐにホテルで休めましたので、今朝は好調だったのでしょう。

さらに、車内や機内が狭い場合、あるいはいかに気の知れた仲間とはいえ自分以外の人と空間を共有する場合、私は常に高い緊張状態にあるようです。そのため、車内などで眠ることができません。ずっと身をこわばらせ、まるでコンサート本番中のように、全身の神経を研ぎ澄ましているのですから、それではぐったりと疲れて当然かもしれません。

沖永良部からは朝の第1便で出発しました。もっとこの島の空気に触れていたかったのですが、次の目的地が待っていますので、後ろ髪ひかれる思いでの出発です。

楽器を貸して下さった「さくら音楽教室」の先生や、教育委員会の皆さんが見送ってくれました。

機内では目を閉じて静かに過ごしました。鹿児島空港での乗り継ぎは約1時間。人の少ないカフェテリアで紫芋のソフトクリームを味わいましたが、これがまた、しっかり芋の味がしてとても気に入りました。

鹿児島から東京へと向かう飛行機では、隣に赤ちゃん連れのママが座っていました。とてもおとなしい赤ちゃんでした。私は悪い黴菌をまきちらさないよう、咳をこらえるのに必死。我慢しようとすればするほど、むせてくるのですね。

そして到着した東京。私のホームタウンです。心身ともに弱まっているからでしょうか、長期にわたって外国を旅した時にさえ感じたことのない「帰ってきた!」という強烈な思いに包まれました。

タクシーに乗ればいいのに、変な節約気分がわいてきてリムジンバスのチケットを購入したのが、今思えば間違いでした。

満席の車内は蒸し暑く、息苦しいほどです。となりに座っている外国人は礼儀正しく、軽いクシャミをする度に、「sorry」と言って周囲を気遣います。

私はゴホゴホと咳が出そうなのですが、あまりに激しくて「sorry」では済みそうもありません。顔を真っ赤にしながら我慢していたら、気が遠くなってしまいました。

夜は大阪で約束がありましたが、間に合いません。事情を話して丁重にお詫びをし、ふたたびよく眠ることにします。