日中は、3月20日の演奏会に向けた現地会場下見&打ち合わせと、担当者との作戦会議のため、明石へ。夕方までに神戸へ戻り、近年親しくさせてもらっている夫妻と合流し、夫妻馴染みの鮨店に招いていただきました。
店のロケーションはJR神戸線摂津本山駅から歩いても行ける場所とのことですが、タクシーを利用したので、土地勘のない私には詳しい位置がよく理解できませんでした。
ロードサイド店がひしめく賑やかな国道2号から曲がって、裏通りに入ると、急に静かな環境に。そこにひっそりと佇む一軒家の鮨店が「生粋」です。
暖簾をくぐると、すぐにL字のカウンターが目に入ります。詰めて10席の小ぢんまりとしたカウンターですが、大将ひとりで丁寧な仕事をすべてこなすには、むしろ多いくらいかもしれません。
店内は改装を終えて1年は経っていない様子。白木を基調とした簡素な内装には、清潔感とともにモダンなセンスが光っています。BGMはなく、無口な大将の包丁さばきと機敏な動作が、音楽以上の効果を感じさせます。
献立はお任せが基本のようです。まずは酒肴が10品続きます。選りすぐりの器もまた、食べ手の感性を刺激し、大将の美意識や気質を垣間見せます。
鮨は12貫。関西ながらに江戸前です。赤酢のシャリで握った鮨には、醤油をハケ塗りして出されるので、あとはつまんで口に運ぶだけ。箸を使うなんて野暮なことだとはわかっていますが、指先に魚のにおいが付くと1週間は気になって弾けなくなるので、無粋を承知で箸を使わせてもらいました。
巻物はトロ鉄火です。
最後は玉と酸漿であがり。
ネタは非常によく吟味されています。大将には相当な思い入れがあり、厳しい目で選びぬいているに違いありません。鮨の出し方にも厳格で、必ず1貫ずつ出し、それを食べきらないと次のネタは出しません。
ご馳走になったので正しいプライスはわかりませんが、予約で満席。お客が帰って空いた席には、またすぐに次のお客が入るという繁盛ぶりです。
丁寧で誠実な仕事ぶりですから、その賑わいも当然と言えば当然。一品ごとの味わい深さはもちろんのこと、鮨が美しいものであることを強く感じさせられました。