多くの人が苦しんでいる中での演奏会。そこに臨む気持ちが穏やかでないことは、ここでも繰り返し打ち明けて来ました。でも、例えば新潟では、お客様のほうが私よりもよほど分別や良識を持っており、私が音楽に込めたものを曲解することなく、まっすぐに受け止めて下さいました。明石に向け、もう迷いはありません。
明石公演が本当に開催されるのかと心配なさっているお客様も少なくないと聞きましたが、どうぞご安心ください。私は這ってでも明石に行き、今持っているものをすべて注いだ演奏をお届けします。満席のお客様をガッカリさせるようなことは、決していたしません。
ただ、先日ここで発表したプログラムは、大幅に変更することにしました。私の「今」の魂にはマッチしない曲も含まれていましたし、今こそ弾きたい曲というのがありますので、曲の差し替えや順番の入れ替えをします。
プログラムは、すでに当初予定の曲目で印刷済みで、曲の解説も記載されていますが、今回演奏できない曲につきましては、また改めてお聞きいただける機会があることと思いますので、どうかご容赦ください。
新しい演奏プログラムでは、大自然への畏怖、生きることの尊さ、祈り、そして絶望から自ら這い上がる精神力など、先人が今の私たちのために音楽に刻んでくれた知恵と力をひも解きながら共有したいと考えています。
だからといって、暗く重い曲ばかりではありません。失意のどん底から、生きる喜びの骨頂までを、ためらうことなく大胆に表現するつもりです。
今、日本中が直面している事態に対しては、この度の明石公演にお越し下さる皆さんの多くが、実感を持って共感し、深い理解をお持ちのことと思います。
私のような何も知らない人間がもっともらしいことを言うのは僭越というものでしょうけれど、どうか、一緒に心を響き合わせて下さいますようお願いします。
新しいプログラムは、当日のステージ上で、私の口からご案内させていただきます。