穢れを知らない顔立ち

コンサートから一夜が明け、その反応が次々と舞い込んで来ていますが、実感した手応え以上のものがあり、気分のいい朝を迎えることができました。そして、やっと上海の春を肌で感じる余裕が持てるようになりました。

私の上海滞在はあと一晩残っていますが、日本から応援に来てくれた仲間たちは今日帰国します。朝食を共にした後、浦東を訪ね、上海で最も高いビルの展望台へと案内しました。

100階の展望台から見渡す上海の街並みは実にダイナミック。まるで活力が地面から湧き出ているかのようです。

昨晩は外灘を歩き、対岸から浦東の夜景を眺めましたが、今日は浦東から外灘のクラシック建築を見ながら散策しました。よく晴れていることもあり、大変な人で賑わっています。

日差しが心地よかったので、黄浦江を見渡すテラスのあるレストランで軽いランチを。そこでくつろぐ人たちも絵になっています。

上海での充実した3日間を振り返りながら、帰国する皆さんを名残惜しく見送った後、私は次の約束へと向かいました。

対岸へはタクシーや地下鉄も使えますが、まだ未体験の観光隧道にチャレンジ。数分置きに発車するゴンドラに乗り込み、ド派手なイルミネーションの中を進んでいくのですが、このような演出をよくまあ思い付いたもんだと感心しました。

対岸の駅周辺、すなわち外灘の遊歩道付近は、めまいがするほどの混雑ぶり。これほどの活気にはなかなかお目に掛かれません。

それを横目にタクシーに乗り込み、淮海路にある音楽練習スタジオへ。そこでツァオ・レイと一緒に来週日本で開催するコンサートのリハーサルです。

エレクトーンはないので、私はピアノを弾きましたが、サウンドというより音楽的な合わせが出来ればいいので、ピアノで十分です。

お互いに、まったく違う人生を歩み、異なる環境で音楽を続けてきたふたりですが、ひとたび演奏を始めれば、たちまち心がひとつになります。やはり音楽の力は大きいと実感しました。

演奏曲もほぼ固まりました。あとは互いに課題を持ちかえり、日本での最終リハーサルに備えます。とてもいい演奏会になると思います。

リハーサル後は、今回の中国滞在では最後となる夕食を。連日酷使している胃袋をいたわろうと、薬膳スープが美味しいと評判の店に連れて行ってもらいました。

そこでは、料理の味ももちろん印象に残りましたが、私が一番気持ちを惹かれたのは、働いている人たちの表情でした。

どう見ても穢れを知らない純粋な顔立ちをした若い男女たち。聞けば、雲南省の近くから上海へ出てきているのだとか。上海へ来てまだ3ヶ月だというその人は、今でも故郷にいた頃と同じ表情を保っているのだろうと思いました。

彼らの瞳には、豊かで素朴な自然が息づいています。そんなピュアな人たちが、もし私の音楽に触れたら、いったいどんな反応を見せてくれるのでしょう。

日本の学校を廻って演奏する時のように、なんの壁もなく、すーっと染み込むような感覚なのでしょうか。今それを確かめる手立てはありませんが、いつか実現してみたいものです。またひとつ目標ができました。