一週間の中国滞在もいよいよ最終日。午後一番の飛行機で帰国するので、残り時間はあとわずかです。今朝もよく晴れ渡り、上海にしては空気が澄んでいるように感じられました。
コンサートが終わり、仲間が先に帰国してからは、ホッと一息つきながらも、ちょっぴり寂しいような気分。ここ一週間の出来事が、まるで遠い昔のことのように思えます。
中国の活気にも慣れ、私の下手な中国語を理解してくれる人も増えてきて、さあこれからという時にはもうお別れです。
最初の頃は、勢いに圧倒されて、恐怖を感じることさえありましたが、今ではこのテンポ感も好きになりました。
以前ならはっきりと理解できなかった中国の伝統的な美意識にも、だんだんと魅力を感じるようになってきました。
同じ花でも日本とは違う咲き方に見え、花でさえ国柄を表しているのかと感嘆してしまいます。
私は日本人として自国の文化や気質をしっかりと表現できただろうかと、花に向かって問い掛けてみたくなりました。
空港まで見送ってくれた上海の人との別れ際。またいつでも会えると思いながら、今回はいつになく立ち去り難く、別れ難い気持ちになりました。
それだけ私がこの街に愛着を感じるようになったということかもしれません。また近い将来に演奏会が持てるよう、心掛けようと思います。
久しぶりに帰った東京は、隅々まで手が込んでいて、細部にまで人の目が行き届いている。そんな印象です。
上海で高揚していたリズムを、東京に相応しいテンポにチューニングするため、少し目を細めて静かに街を眺めてみました。
そして美しい夕暮れ。東京にも少しずつ戻ってきた行きずりの外国人たちと共に、しばし足を止めて夕陽を見つめました。
おそらくもう二度と会うことのない人との対話。そんな一瞬にも、何かが通う実感がありました。大きな旅の最後に触れた小さな出会い。これもまたひとつの小さな旅なんですね。
深夜。ハイアットリージェンシー東京のロビーでは、シャンデリアのメンテナンスが行われていました。いつもは見上げる巨大な造形が、今は目の前に。まるで天から宇宙船が舞い降りたよう。作業員たちの仕事ぶりも見事です。