東京滞在中のツァオ・レイを食事に招きたい。私の親はそう張り切っていました。私の上海公演に同行した際のディナーに付き合ってくれたツァオ・レイは、今回もまた快く時間を割いてくれました。
集まったのは、親が行きつけの天ぷら店。カウンターに陣取り、揚げたてで提供される旬の味覚を味わいました。ツァオ・レイは好き嫌いがほとんどなく、何でも美味しそうに食べています。
いや、もしかするとあまり好きでないものも並んだかもしれません。でも、その見事な食べっぷりに、私の親は大満足。日本語と英語がちゃんぽんになった意味不明の会話にも、しっかり笑顔で応じてくれているツアオ・レイを見て、実力も人柄も申し分ないと改めて思いました。
一方、私は出演者のひとりであると同時に、他にも大事な役割があります。今回の公演において、ディレクターでもあり、プロデューサーでもあるので、演奏以外の事務作業がたくさんあります。
ツァオ・レイの滞在が快適で不自由ないものであるようにケアすることも大切ですので、交通やホテルの手配も人に任せず私がしています。
そして、ステージに関わることでは、音響、照明などの依頼や打ち合わせもあり、演奏会が近づくにつれ、慌しさは指数関数的に増えていき、楽器に向かって自分の稽古をする時間はまったく残りません。
でも、自分のことは何とかなると信じて、共演者に気持ちよく演奏してもらうために気持ちを砕く方が、よい結果になると思っています。