Oriental Sences 小樽 チャリティーディナーの夕べ

まるで長年アンサンブルを練り上げてきた古い仲間。4月17日のディナーイベントのリハーサルをスタートして、すぐにそう実感しました。

つい4日前までは、一緒に演奏したことがなかったなんて、本人たちも信じられないという気持ちです。

会場入りしたのは、昼食の直後。すでにセッティングが終わっており、すぐにステージが引き渡されました。

先日、初めてアンサンブルした渋谷と、今日の会場とでは、規模や条件が大きく異なっていますし、現地スタッフたちは私たちのアンサンブルを聴いたことがありませんので、演出のヒントにしてもらうために、ランスルーのリハーサルをおこなうことにしました。

ところが、サウンドチェックの後、曲が始まっても、誰ひとり真面目に弾きません。

そのわけは、第一に、当日入りだったので、すでに体力を消耗しており、これ以上の疲労は本番に悪影響だから。もうひとつは、互いの真剣勝負を本番に温存することで、感性のぶつかり合いを実現したいという狙いがあったからです。

それぞれに渋谷でどこかよくなかったか、自分のことは自分が一番よくわかっています。同じ過ちを犯さないために、渋谷の事故はリハーサル時に解決するよう、それぞれが心がけます。

どうにも熱意のない、だらけたリハーサルが終わりました。おそらくそれだけを聞いた人は、本番もこの程度だろうかと不安に思ったかもしれません。

でも、信頼し合っているからこその、レイジーなリハーサルです。

さて、本番まであと4時間あります。とりあえず解散しましたが、YONEちゃんはピアノに向かって狂ったように弾きまくっています。アンサンブルのリハーサル以外、一切鍵盤に触れない私とは大違いです。

私は客席でYONEちゃんのピアノをじっと聞いていました。時に友人として、時に兄貴として、見守るような気持ちで。

本番を迎える前に燃え尽きてしまうのではないかと思わせるほどの熱演ですが、小さなピアノを宴会場で弾くという無理な要求と闘っているようにも見えました。

リハーサル時間が終わると、一度ホテルルームに戻り、身支度を。本番直前に集合した時には、3人ともリハーサル時とは別人のように、晴れやかで凛とした顔になっていました。

場内では八千代さんがお届けする「座席でできるエアロエクササイズ」のプレゼンテーション中。客席の皆さんも身体を動かして、血流がアップしている様子です。

うっすらを汗がにじんできたところでコンサートのはじまりです。

当初は渋谷とは別のプログラムを考えていましたが、渋谷が好評でしたので、ほぼそのままの内容でお届けすることにしました。

真っ暗なステージにスタンバイし、私とツァオ・レイが奏でる幻想的な即興の序奏からスタート。照明が徐々に明るさを増すと、音楽はいつの間にか中国の民謡「茉莉花」へ。そして、トゥーランドットの「誰も寝てはならぬ」へと続いていきます。

中国の新しい夜明けをイメージしたイントロダクションから、2曲目は官能的でチャーミングなタンゴ「ポルウナカベーサ」。次はツァオ・レイの独奏「空山鳥語」。地球の表裏、そして夢と伝説を渡り歩くという趣向です。

続いては米津真浩のピアノソロで、「ラ・カンパネラ」「メロディー」「トルコ行進曲」と、ロマンティックな旋律とダイナミックなリズムが交錯するピアニズムの世界へ。

エレクトーンを中心としたセクションでは、日本人の3作品を演奏。「ラストエンペラーのテーマ」「さくら」「蘇州夜曲」と、いずれもオリジナルアレンジです。

祈りのコーナーでは、「タイースの瞑想曲」を。クライマックスは「チャルダッシュ」と「チゴイネルワイゼン」。男性的でパワフル、そしてスリリング。あっという間に時が経ったような印象です。

ここがホテルの宴会場で、しかもお客様はお食事の後というリラックスタイムにもかかわらず、コンサートホールの演奏会のように、音楽に真正面から向き合って下さいました。

おかげで渋谷に続いて、とても気持ちのいい演奏をお届けすることができました。

今回のチャリティーディナーも、幾多の困難があり、途中、中止の危機を何度も盛り超えての実現となりましたので、終わった後の歓びはひとしおです。

音楽の世界を築くことに多大な協力をして下さったお客様、そして悲しみを胸に耐えている人たちのために、共に祈って下さったお客様。本当にありがとうございました。