旅先での食事は、旅の印象そのものを大きく左右する大切な要素。特に初めて、あるいは久しぶりに訪ねる場所では、当地ならではの食材を、優れた技術とセンスで愉しませてくれるレストランが欠かせません。
日本各地にも魅力的な目的地がたくさんありますが、「あのホテルのあの味を求めて旅に出る」と思わせてくれるほどの料理となると、かなり限られてしまいます。
エピキュリアン料理とは、フランス料理や日本料理といった国の特徴によるジャンルではなく、優れた素材を美味しく料理して、心地よい環境で味わうという、美食の理想を追求したヤマハリゾートオリジナルのスタイル。
かつて、「はいむるぶし」をはじめとする各ヤマハリゾートには、エピキュリアン料理を提供するレストランがありました。運営が変わった今でも「エピキュリアンルーム」という名称は残っています。
今回、宿泊の予約をした後に、「クラブダイニング(エピキュリアンルーム)」で、ゴールデンウィーク(4月29日~5月5日)限定特別コース料理(1日限定20名)を提供するという案内を公式サイトで発見し、これは行ってみなくてはと思い、早速予約しました。
コースは3種類あり、1万円から2万円。料理の内容も記載されていたので、一番好みに合っている15,000円の「美(ちゅら)」和洋折衷コースを選びました。
予約当日、時間通りに店に行くと、先客が1組食事を始めているだけで、後の席は空いていました。セッティングがしてあるテーブルは、私の卓も入れて3テーブル。せっかくの企画なのに、あまり予約が入っていないようです。宿泊は満室だというのに。
テーブルは、フレッシュのハイビスカスや月桃でデコレーションされ、今日のメニューが名前入りで置いてありました。
そこにソムリエでもあるマネジャーが現れ、メニュー内容の説明をしてくれました。飲みものを勧められたので、まずは冷えた白ワインをグラスでもらい、ワインリストを眺めることに。
リストの品数は少ないものの、10年程前に仕入れたと思われるグランヴァンやスーパートスカーナが、え?というほどのお値打ち価格で記載されており、思わず「全部」と言いたくなってしまいました。
マネジャーが白ワインを持ってきたら、相談しながら選んじゃおうと待っていたのですが、すでにグラスに注がれたワインを持ってきたのは、若い女性の係でしたので、もう少し待つことに。
ところが、結局、最後までその女の子がテーブルを担当し、マネジャーは他のお得意様と思われるテーブルに付ききりで、一度も顔を出せないようでした。というわけで、高級ワインは中止。グラスでもらったシャルドネも私好みの味でしたので、そのままチビチビと最後まで持たせました。
その女の子のサービスも、決して悪くありません。むしろ感心するほど丁寧で、料理の知識もきちんと把握していました。
さて、料理はというと、期待値を100だとしたら、満足度は200でした。今どき、期待を裏切られることは数知れませんが、それを大きく上回るなんて奇跡のようです。
まずは琉球珍味盛り合わせ。会席料理のような美しいあしらい。
温前菜はフォアグラのソテー、沖縄油味噌風味 島黒米のリゾット添え。
造りは、鰆、鰹、そしてミーバイ。ポン酢でさっぱりと。
島野菜と茸のロワイヤル 鰹風味のスープをそそいで。茶碗蒸しの趣きです。
島伊勢海老香味揚げ。堂々とした盛り付けに思わず歓声が・・・。
パッションフルーツのグラニテ。久しぶりです、こんなに軽やかで美味しいグラニテは。
石垣牛のグリル 島野菜の菜園仕立て ソースジュドブフ。まずはシェフが肉見本を持ってテーブルへ。
高級鉄板焼グレードの見事なお肉はもちろん、添えられた野菜も、味がそれぞれ際立っていました。
テラジャ貝ともずく雑炊。ホタルイカにも似た、でももっと歯ごたえのある食感の貝でした。
デザートはヌガーグラッセ トロピカルフルーツのマリネ。
最後に島茶でごちそうさま。
これほどの実力を、普段はどうしているのでしょう。本当にもったいないと思います。それに、今回の企画も、宣伝があまり上手ではないように感じました。
チェックインの時にもパンフレットを配られましたが、サイトにもパンフレットにもメニューを文字で書いてあるだけで、どんなご馳走が出てくるのかイメージできません。
リゾートの夕食としては高額ですし、値段だけ立派で中身はショボいというホテルはいくらでもありますから、ここがそんなことはしないとわかっているのは常連さんだけでしょう。
せめて、伊勢海老料理とお肉見本の写真でも載せておけば、もっと興味をひいたかもしれません。
この企画、ぜひ続けて欲しいものです。この料理のためだけにでも、東京から訪れる価値がありますから。