もし音楽家にならなかったら、私は何をしていたのでしょうか。そして、もし生まれ変わったら、また私は音楽の道を歩むのでしょうか。
音楽のない人生を考えるなんて、もし地球に水が無かったらという考察に等しく、今の私には意味がありません。でも、私が音楽に深く親しむことがなければ、別の人生があったはずです。
実際、こどもの頃には音楽家になる希望はまったくありませんでした。一番大切な趣味という感じで、それで生きていくことになるとは、思いもよらなかったことです。
では、なぜ音楽家になることにしたか。それは、なろうとしてなったのではなく、気がつけばステージに立っていたというのが、現実に最も近いかもしれません。
ところが、音楽家として生きていくには、たくさんの「苦手」を克服しなければなりませんでした。
まず、人とのコミュニケーションが嫌い。それに、人から期待されることも嫌い。やりたくないことをするなんて、絶対ムリ。これらをどうにかしなければ。
考えてもどうにもならないので、とにかく現場に飛び込んでいくしかありませんでしたが、次第になんとかなるものなのですね。
人前で話をするなんて、とんでもないことだったのに、繰り返しているうちに慣れるものだと、我ながら感嘆しました。
でも、やっぱり本質的には孤独にコツコツとする作業が好きなんだと思います。
今は、自分の感性で集めたものを、音楽に託して皆さんにお届けすることに、一番のやりがいを感じます。はたらきバチのようにコツコツを集めた音楽のハチミツ。皆さんに味わっていただきたい。
それはそうと、もし音楽家にならなかったら。あんがい世話好きなので、昔はレストランやホテルで働くのもいいなと思っていましたが、人の言うことを聞けないのでムリですね。
やっぱり、音楽家しかないのかもしれません。