今夜は大好きなレストランで友人の結婚記念日のお祝いでした。いつも大満足させてくれる店ですが、今回はひときわ素晴らしいひと時となり、ますますファンになりました。
記念日を祝う店を選ぶに当たり、友人夫妻からアドバイスを求められ、私は責任の重さを感じながら、考えに考えました。
東京は言わずと知れた美食の都です。世界中から最高の食材が集まり、類稀な才能と技術を持った料理人が揃っています。
そんな東京ですから、評判の高い店を選べば、それなりに思い出深い一夜を過ごすことができるでしょう。
でも、友人は私のセンスを信じて相談してくれたのですから、その期待を上回る選択をしなければなりません。
星の数ほどある店からベストを選ぶのは容易でないばかりでなく、料理やサービスには相性というものがありますので、その波長に合った店である必要があります。
また友人からは、ホテル内レストランである方が何かと好都合だとリクエストを受けていたので、そこで選択肢はグッと狭くなります。
最終的に絞り込んだ数店の候補からトロワグロを選んだ決め手は、居心地の良さでした。ぬくもりの感じられるインテリア、ドレスアップして訪れても違和感のない雰囲気、洗練されたサービスにおいて、トロワグロなら申し分ありません。
店が決まってからは、この日のための献立を特別に組み立ててもらうために、何度も店とメールでやり取りを繰り返しました。
そして今日、その料理たちと、それにふさわしいワインが、テーブルで私たちと出会ったのです。それはそれは胸のときめく出会いであり、生涯忘れられない瞬間たち。これこそがレストランの醍醐味です。
最初の突き出しはパッションフルーツで風味付けした蕪、烏賊、栗のペーストとブラックトリュフ。ルイロデレールクリスタルロゼとともに。
アミューズブーシュには10時間掛けて柔らかく仕上げた黒鮑とキャビア。
栗かぼちゃとトリュフのメッツアルーナ。軽やかなナージュソースを添えて。
鴨のフォワグラポワレ グレープフルーツのコンフィ。かたちが美しく筋ひとつないフォアグラ。その上に載ったインドの黒胡椒は、ピリッと辛くエキゾチックな風味です。
イトヨリ “インディアンの夏”は、パセリのグリーンとトリュフの黒が濃厚なバターでコーティング。白ワインはムルソー コシュ・デュリ2004。
オマール海老のナヴァランは、身のしっかりとしたブルターニュ産オマールと、幾種類もの野菜たちの競演。羊の煮込み料理であるナヴァランをオマール海老でアレンジしたのだとか。
和牛フルーリーソース トリュフの香り。トリュフは香りだけでなく味覚をも満足させてくれます。濃厚なフルーリーワインのソースや添えられたじゃがいもも素晴らしい。赤ワインはシャトー ラ コンセイヤント2001。
チーズセレクションの前にサプライズの一皿。熟成させたハードチーズを薄くスライスし、胡桃オイルやブラックトリュフスライスでデコレーション。
チーズセレクションからはウォッシュタイプのものを1種類だけ選びました。
アヴァンデセールは軽いショコラスープの上に、フレッシュココナッツの実をスライスしたものを浮かべ、ライチのソルベを添えて。
お待ちかねのデセールは日向夏のスフレとバジルのグラス。デザートワインはイケム1996。
最後はエスプレッソと小菓子。
素晴らしい料理には言葉もありません。ワインとの相性も見事。サービスは洗練を極めており、振舞いもタイミングも堂に入っています。
楽しむことに専念できる安心感。それは当たり前のようでいて、今では得難いもののひとつですが、今夜はレストランとして圧巻の実力を見せてくれました。喜怒哀楽的には文句なしの喜-5です。