涙雨

午前4時。ホテルルームから眺める海の向こうでは、雲の合間から陽が昇ろうとしています。そのドラマチックなグラデーションに、また旅の心が揺さぶられました。

午前中に東京へと戻るため、早い時間に小樽を出発。駅まで数百メートルを歩く間だけ、パラパラと雨が降っていました。なんだか涙雨のようで、後ろ髪引かれる思いです。

土産物を抱えた人でごった返す新千歳空港から東京へ。羽田からは足早に車に乗り込み、自宅へと急ぎました。

土曜日に出発してから50時間後の帰宅。なぜ急いだかというと、早く稽古を再開したかったから。

手掛けている作品が体に染み込んだかどうかは、2日ほど間を置いてみるとよくわかります。もし体で会得していれば、ブランクがあってもスムーズに弾けるはず。

仮にまだ十分に染み込んでいなくても、この時に崩れる場所を把握すれば、どこの稽古が足りないかが一目瞭然です。

それを見極めるチャンスは、間を置いた直後の演奏のみ。荷解きもそこそこに楽器に向かい、晴れて迎えた本番当日のステージ同様、意を決して弾き始めました。

もう大丈夫。まだわずかに残っていた不安は、たちまち自信へと変わりました。

コツコツと毎日決まったペースで稽古するのも悪いわけではありませんが、自分に何かを仕掛けつつ、ゲーム感覚で稽古を楽しむのも、上達のコツです。

コンクールや発表会で本番が近い皆さん、ぜひ本番ごっこをたくさんして、自信を深めて下さい。