Billboard Live Yokohamaでの公演を終え、ちょっとした放心状態を味わっています。一度ごとのステージに可能な限り時間を注ぎ、すべての機会に最大限の思い入れを持って務めてはいますが、このようなロスは滅多にありません。
人生に正念場が何度か訪れるものだとすれば、私にとっては今がまさにそれであって、毎日歯を食いしばり、胸が張り裂けそうなところを深呼吸で整え、平常心を辛うじて死守している中、弾くことは最良の鎮静剤でもあり、唯一夢中になれる救いです。
その意味でも、ビルボードで今井さん、中井さんと熱く演じるのは本当に楽しくエキサイティングでしたので、終わってしまうととても淋しく感じます。
それにしてもいいステージでした。さまざまな楽曲がバランスよく並び、演じ手それぞれの魅力が偏りなく光る内容というのは、あるようでいて滅多にありません。
なので、今回は遠慮せず全力で弾くという宣言をしました。これは歌手も受け止めるのがたいへんです。楽しく気ままなツーリングではなく、フルスロットルのレーシングカーの並走ですから、ちょっと間違えば一大事。
でも、歌手のふたりは私のプッシュを面白がりながら、類い稀な柔軟性で応えてくれました。終演後は3人揃ってふだんよりも疲労の色が濃く出ていたのですが、それこそ完全燃焼の証拠だったと思います。
このふたりと共演を重ねられることは、私の誇りです。
そして、ひとつ大きな気づきがありました。私は音楽を個人的にというか、自己表現に利用することはできないとわかったのです。
この曲はあの人のために弾こうと、自分の心境と重なる曲目も多かったのですが、結局、そんな弾き方はできませんでした。私にとって演奏とは、誰かのためではなく、自分のためでもなく、シンプルにその作品のためなのだとはっきり理解しました。
自分のこの感覚に自信を持ち、この先も、作品の持ち味を表現することに専念しようと思います。
ビルボードの入り時間が早かったため、前のりをして横浜に一泊しました。日付が変わる直前の到着だったので、夜はゆっくりできませんでしたが、その代わりに朝のヨコハマを満喫。古い建物が整然と並ぶ街で、務めや学校に向かうため足早に行き交う人を眺めながら、ビルボードまで一駅分を歩く。
ヨコハマってこんなにシドニーっぽかったっけ?また神戸に住みたいな。何もかもが新鮮な朝のおかげで、いい一日になりました。
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