展覧会の絵/もものコンポート

夏空の誘惑を振り切って稽古に明け暮れる毎日ですが、音楽と向き合っている時ほど幸せな瞬間はありません。ふだんの私は一本の外れたネジでしかありませんが、音楽と共にある時だけは、壮大なものの一部になれたような気分を味わえます。

今月末からは米津さんとのコンサートが続きます。ピアノソロ、エレクトーンソロ、そしてアンサンブルと盛りだくさんで、プログラムは全編ロシアの作品です。ロシアものと聞くと堅苦しいとか重く暗いといったイメージが付きまといますが、今回はロマンチックで親しみやすい曲ばかりを揃えました。

米津さんはソロもアンサンブルもラフマニノフ。私はチャイコフスキーを弾こうかと考えていましたが、せっかくなので新しいものを思い、ムソルグスキーの展覧会の絵に取り組んでいます。

時間の関係で全曲は弾けないのですが、この上なく有名なプロムナードから始まり、壮大なキエフの大門まで、おいしいところ取りのハイライトで演奏します。

原曲はピアノ独奏用ですが、多くの音楽家の手によって編曲がなされています。今回はラベルによる管弦楽用編曲を基にしてエレクトーン独奏用に編曲しました。いずれは、電子音なども交えて、新しい編曲にも挑戦してみるつもりです。

展覧会の絵はずっと前から弾いてみたい作品だったにもかかわらず、どういうわけか10年以上も棚上げになったままでした。それはたぶん、この作品にのめり込むほどの時間と情熱が揃わなかったから。結果的には今このタイミングで着手してよかったのかもしれません。

仕上がりは上々です。弾いていあまりにも楽しいので、ずっと弾き続けていたいほどです。まるでムソルグスキーと並んで絵画を眺めているような気分。そして、ラベルのムソルグスキーに対する並々ならぬオマージュに包まれる感覚。すでにこの世から去った人たちと通い合うなんていうとまるでミディアムの世界ですが、ある意味、音楽はタイムマシンなんだと思います。

神田将の「展覧会の絵」は、8月25日の香川、8月29日の姫路、9月1日の新潟でお楽しみいただけます。

↑は最近お気に入りの一皿。白桃のコンポートと赤桃のパルフェグラス バジルのアイス添え。シェラトン都ホテル東京の「バンブー」にて。グランメゾンのパティシエが作ったデセールを思わせる素晴らしい出来栄え。季節限定だそうです。