第45回霧島国際音楽祭(3)

「プチョヘンザ!クラシック」コンサートを終えて、川久保賜紀さんとふかわりょうさんに別れを告げ、鷲尾麻衣さんと一緒に霧島神宮へ向かいました。途中、嘉例川駅に立ち寄って、夏の無人駅の風情をしばし満喫。ホームで記念写真を撮ったり、駅舎にある足踏みオルガンで遊んだり、束の間、童心に還った気分を楽しみました。

昨年の「霧島神宮かがり火コンサート」は津軽三味線の浅野祥さんとともに出演し、おおいに盛り上がったことをつい先日のように思い出します。今年はソプラノの鷲尾麻衣さんとのステージ。相手変わればエレクトーンの役割も表情も大きく変わりますので、また新たな魅力をお届けできるのを楽しみにしていました。

例年、夕刻に通り雨があったり、開演中に雨が降り出すなど、山の変わりやすい天気が気がかりですが、今年は良い天気が続き、準備がスムーズに進みました。交通は便利でないのですが、毎回多くの方々にご参加いただいている「かがり火コンサート」。この日も用意したイスが足りなくなり急遽増設する賑わいとなりました。

鷲尾さんの選曲は緩急に富んでとてもドラマチック。そして華のある振る舞いが、聞き手を作品の世界へと誘います。エレクトーンとの相性も抜群で、終始気持ちよく弾くことができました。

屋外コンサートの醍醐味は、自然環境を音楽に取り込めるところ。虫の声、かがり火のパチパチと弾ける音、刻々と変わる雲の流れ、そして満月前夜の明るい月明かりなど、天然の舞台演出が圧倒的なスケールで音楽を盛り上げます。

そして今年もムササビが飛び、客席から大きな歓声があがりました。もはやタイミングを心得て飛ぶ目立ちたがり屋のムササビではないかと思えて来ます。月にちなんだ選曲も、この夜の雰囲気にぴったりでした。

最後はおはら節。今年も皆さん輪になって踊ってくださり、日本の夏の夜がそこに広がっていました。

「プチョヘンザ!クラシック」と「かがり火コンサート」の二本立てと、私にとってはピークとなる一日でしたが、夢中で楽しんでいるうちに無事終えることができ、ホッとしました。これは、スタッフの皆さんが必要なサポートをパーフェクトにしてくれるからこそ。何もかも気持ちのよい霧島国際音楽祭です。

翌日は休演日でしたので、少し体を休めつつも、みやまコンセールの楽器庫にエレクトーンを下ろしてもらって、立派なピアノや豪華なチェンバロに囲まれつつ、後半の演奏会に向けた自己練習に励みました。

もうプチョヘンザやツィガーヌなどを弾かなくていいのが、むしろ寂しくて、ちょっとしたロスに。この音楽祭の空気にいつまでも浸って、自分を磨き続けていられたらいいのに。私の役目はもう少しで終わってしまいますが、せめて鮮やかに気持ちのいいステージをお届けしたいと思います。

つづく