「県民ふれあいコンサートin県庁」で盛り上がった気分そのままに、自己練習で汗を流し、夕方から「プチョヘンザ!クラシック」のリハーサルに参加しました。
「プチョヘンザ!クラシック」コンサートは、霧島国際音楽祭の目玉企画のひとつに数えられ、ユニークかつ斬新なアイデアを盛り込みながら、実際は誰も完成形を予測できないという、ある意味怖いけれど、だからこそ何ともエキサイティングなステージです。
中心はふかわりょうさん。ロケットマンの名前で音楽活動をしていて、クラシック音楽にも詳しく、名曲を軽快にノリ良くアレンジしたものを多数発表しています。
今回はそのオリジナルアレンジをライブ形式で披露するというのが大きな柱になっており、ふかわさんには自作の音源を使ったDJ役を、私はそこに生演奏で更に音を加えてシンフォニックな要素を盛り込んでいく役を担うことに。
そしてソプラノの鷲尾麻衣さんとヴァイオリンの川久保賜紀さんも加わってくれることが決まり、サウンドの可能性が一気に拡大しました。鷲尾さんと川久保さんのパートは私が書かせてもらえることになり、かつてないふたりの姿を思い描きながら、大胆でスタイリッシュで斬新なパートを作りました。
しかし、DJとの兼ね合いがどうであるかや、そもそもふかわさんのイメージと合うのかなど、不確定な要素も多く、生演奏部分を完全にフィックスすることはできず、相当にフレキシブルな書き方をする必要がありました。
完全な楽譜を提示するのが通例となっているクラシックの演奏家に、そこはどうなるかわかりませんと言わなければならないのは苦しかったのですが、ふたりとも困惑するどころか面白がってくれたのです。
できる限りの下準備をして迎えたリハーサルですが、とんとん拍子にはいきません。翌日の午前中には本番ですから、この数時間で完成させるしかなく、焦りも出てきますが、誰も妥協をしたがらないのが本当にカッコいいです。ああだこうだと意見を出しながら、あらゆるアイデアを試して、何とか見えて来たところで、一旦休憩。
私は朦朧として今にも主電源が落ちそうでしたが、今ギブアップしてどうするという意地で踏み堪えました。それに休憩している余裕は実際ないのです。
「プチョヘンザ!クラシック」の前半は、クラシックのスタンダードな演奏会です。鷲尾さんとの演目やエレクトーンソロはリハーサル済みですが、川久保さんとのリハーサルはこれから。
というのは都内で予定されていた唯一のリハーサルを、私が体調不良で欠席してしまったから。シェヘラザードはともかく、ツィガーヌが初めての私が原因でソリストの足を引っ張るなど絶対にあってはなりません。
合わせるならこの時しかないということで、川久保さんにお付き合いいただき、2曲やってみました。私はちょっと力み過ぎてしまいましたが、川久保さんは何があってもピタッと合わせてくれて、実にお見事。これで一安心です。
プチョヘンザ!の方も改めて通し稽古をして、完成形を見ることができ、こちらも一安心。ホテルに戻ってから、変更点をまとめ、何とか頭に詰め込んで少し休んだら朝。
いつもそうですが、多少の不安があったとしても、会場へ一歩踏み入れれば覚悟が決まります。ステージは短時間でカスタマイズされ、すっかりプチョヘンザ仕様になりました。照明もサウンドもいい感じです。
本番は、川久保さんのヴァイオリンがツィガーヌのカデンツァを奏で、クラシック音楽祭らしい品格のある情熱で開演。エレクトーンのオーケストラが加わり、管弦楽版でありながら、室内楽の緻密さでアンサンブルを紡ぎます。
続いて鷲尾さんによるエレクトリックなカッチーニのアヴェマリア、ドラマチックなハバネラがあり、川久保さんとのシェヘラザード終楽章。私にとっては人生のハイライトというべき本当に夢のような時間でした。
そしてガラリと雰囲気を変えてプチョヘンザがスタート。最初は戸惑っていたお客様も、次第にノリノリになり、いつしか総立ちの賑わいへとヒートアップ。鷲尾さんや川久保さんのカッコいいこと。何もかもが新鮮でした。
霧島国際音楽祭はハイエンドのクラシック音楽祭です。予定されている公演の大半は、世界トップレベルの本格的かつ王道的なクラシックコンサートですが、一方でこうしたユニークな企画にも積極的です。
音楽の姿がひとつではなく、楽しみ方も演じ方も多様になっている今の時代に、更にその一歩先をゆくプランを次々と打ち出しています。思えば、エレクトーンに出番をくれた音楽祭は他にほとんど例がありませんし、エレクトーンの活用は固定概念にとらわれない運営を象徴しているともいえるでしょう。
今回もまたクラシック音楽という湖にひとつの石を投じました。その波がどのような効果をもたらすのかはわかりませんが、公演で思い切り楽しむお客様の様子に、大きな可能性を見た気がします。
しばらく余韻に浸りたいところですが、すぐに霧島神宮へ移動して、かがり火コンサートの準備です。最後まで体調がもちますように。
つづく