もう6月に入りましたが、5月に開催された演奏会のひとつを振り返ってみたいと思います。
5月19日は姫路文化堂でサロンコンサートを開催していただきました。ささやかな催しでしたが、私にとってはたいへん特別な意味のある演奏会でした。
ひとつは、ヤマハ特約店での演奏会であったこと。エレクトーンはヤマハの製品であり、エレクトーン演奏家の多くはヤマハと深い繋がりを持っていますが、私にはそうしたパイプがないに等しく、したがっていわゆるエレクトーンの世界での知名度もほぼありません。
こんなにエレクトーンを弾いているのにどうして?と尋ねられることも多いのですが、私がもともとエレクトーン愛好家に向けた演奏が得意ではなく、むしろエレクトーンの世界の外にいらっしゃる方々に向け、エレクトーンらしさより音楽そのものを重視した活動に特化してきたことで、エレクトーンの世界ではあまり注目されてこなかったからだとお答えしています。
もちろんヤマハの皆さまには、こんな私のことにも目を向けていただき、様々なかたちでご紹介くださっているのですが、エレクトーンの世界でのご縁はあまり広がりません。
そんなわけで、私の演奏会がヤマハ特約店で開催されるというのは非常に珍しいのです。
実際、知名度のない私の演奏会をやっても、特約店にメリットはないかもしれません。それでもやりたいと言ってくれた文化堂の心意気にまず惚れました。
市内のホールを使うことも検討してくれたのですが、せっかく社屋にホールがあるのですから、そこを活用しないのはもったいない!
狭くて申し訳ないと気遣う店長に、皆さんが親しみを持っているいつもの場所で、フレンドリーな雰囲気でやらせてもらいたいとお願いして、社屋のホールでの開催が決まりました。
当日、文化堂に到着すると、すでに会場の準備が整い、目一杯に椅子が並んでいました。こんなに集まってくれるの?と聞くと、超満員との嬉しい返事。ああ、頑張ってくれたんだなと、胸が熱くなります。
早速リハーサルを始めましたが、すでに用意されていた温かい雰囲気に、音楽はたちまち花開いていきました。
さて、この演奏会が特別だというもうひとつの理由は、私の復帰舞台だったからです。3月以降静養しており、通常ボリューム(私にとっては120分の演奏)を控えて来ました。静養中にも、水族館など短いステージはいくつかありましたが、通常ボリュームの演奏は70日ぶりです。
その間、音楽性こそ衰えないにしても、筋肉やらバランス感覚やら、肉体的なところが大きく衰えていますので、この演奏会は本当に怖かったです。果たして思うように体が動くのか、持久力や集中力は大丈夫なのか。やってみないことにはわからないことばかりです。
そんなコンディションで本番を終えてみると、思っていた以上に体が衰えていることがわかりました。タッチコントロールの柔軟性も劣化し、初めて演奏中に鍵盤を血染めにしました。自分としては納得のいかないことだらけでしたが、完全復帰に向けてやるべきこともはっきりしましたし、お客様も主催者も楽しんでくれたのが何よりです。
この経験を糧に、必ず前以上のコンディションに進化して、また皆さまにお目にかかりたいと思います。ご期待ください。