コーヒーハウス「オリガミ」。
この日本的でありながら外国風のネーミングに、懐かしさを呼び起こされる方も少なくないと思います。
日本発の外資系国際ホテルとして東京ヒルトンホテルが開業した昭和38年以来、ホテル内コーヒーハウスの草分け的存在として親しまれ、ホテルメイドのインターナショナル料理を気軽に楽しめる店として、宿泊客だけでなく様々な人々愛されつつ、いつも賑わっていました。
ホテル名がヒルトンからキャピトル東急に変わってからも、コーヒーハウス「オリガミ」の名は残され、数々の名物料理もまた引き続き提供されて来ました。
しかし、キャピトル東急ホテルは、建物老朽化のため、43年目に閉館し解体されました。
これで「オリガミ」の歴史も途絶えてしまうのか残念に思いましたが、キャピトル東急ホテルがあった山王の森からほど近い赤坂見附の東急プラザ内に移転して営業を続けています。
店はかつてよりだいぶ小さく、場所も地階にあってあまり目立ちませんので、ここを利用しているお客は通りがかりに立ち寄ったのではなく、目的意識を持って訪れているのだと思います。
かく云う私も、渋谷で稽古を終えた後、ふと「久しぶりにオリガミに行きたいな」と思い、足を運びました。
スタッフの顔ぶれは、キャピトル時代からほとんど変わっていません。スタッフの皆さんは毎日多くのお客と接しているので、私の顔など覚えていないでしょうが、私はひとりひとりのことをよく覚えています。
10年以上前、まだ若かったあるスタッフは、混雑する店内でいっぱいいっぱいになって駆け回っていることもありましたが、今ではすっかり立派になって、堂々とゆとりのあるサービスぶりを見せています。
スタッフの入れ替わりの激しい飲食店で、ずっと顔ぶれが変わらないというのは素敵です。
この夜は雨にしてはテーブルが半分以上埋まり、なかなかにぎやかでした。
席に着くと、毎度お気に入りの「スプレンディドディナー」を注文。前菜、スープ、メインディッシュ、デザートをそれぞれ幾種類の中からチョイスして、自分の好みのコースを仕立てるプリフィクススタイル。他にサラダ、パンまたはライス、コーヒーまたは紅茶が付きます。
選ぶ料理によっては追加料金が必要ですが、基本は3,927円とまあまあ手ごろです。
季節のお勧め料理も選べるようになっていますが、今回は「オリガミ」定番の料理を中心にチョイス。真鯛のカルパッチョ仕立て、白菜のクリームスープ、ハンバーグステーキ、そして、デザートはシーズナルスペシャルのストロベリーグラタンを選びました。
とりわけ豪華だったり、奇をてらっているものは何もありませんが、どの料理もホテルクオリティの素材と手順で、ベテランシェフによって調理されますので、味は安心ですし、とてもよい状態で提供されます。
このように当たり前のことが当たり前に行われているのですら、今の時代にはなんだかとても貴重なものに出会った気にさせられます。
サービスに気取ったところはなく、やもすれば荒削りな印象がなきにしもあらずですが、それでもまったく不快に感じないのは、テンポ感のあるノリがあるからかもしれません。
丁寧さを損ねず効率よく立ち回るという点では宅配の兄ちゃんたちに通ずるものがあり、ノリの良さは江戸前寿司屋的な一面を感じさせます。
カジュアルな雰囲気の中、ちょっとだけ隠れ家的なレストランで、ホテルメイドの料理を味わえる「オリガミ」。
ここでの営業は期間が限られますので、今がチャンスです。
10月22日には、キャピトル東急ホテル跡地に新しく開業するザ・キャピトルホテル東急のオールデイダイニングとして新しいスタートを切る予定とのこと。今から期待が膨らみます。